あなたのそばに「ストレッチおじさん」はきょうもいる

あなたは100歳まで生きる可能性がある。

いわれなくたってそのつもりだ。という人もいるかもしれないが、たいていの人は「無理にそこまで生きなくても、せいぜい80、長くても85歳あたりで・・」と思うに違いない。年金だっていつまでもらえるか分からないし・・とつながる。もっともである。あなたがいま40歳だとして、80になるのは西暦2057年。日本の人口は現在より3千万人も減って9,500万人。年金を稼ぐ側の生産年齢人口も、同じく3千万人も減る。つまり日本の総人口の半分でしかない5千万人足らずで、残りの4千5百万人の年金受給者を支えるのである。ひとりの労働者がひとりの高齢者を養う? そんなの無理に決まってる。このように社会は思っている以上に変貌していくのだ。高齢者からすれば、働けない身体に年金ストップされて果たして生きていけるだろうか?

「だからベーシックインカムなんです」
と、先日の選挙前テレビ党首討論会で「時のひと」小池百合子氏は言う。ベーシックインカムなんて導入すれば年間100兆円は必要になる。財源はどうするんですか?という司会者の質問に「AIです」ときっぱり。「A.I(エーアイ)からB.I(ビーアイ)に・・」とまるで韻を踏んだような回答に、参加者だれもが言葉を失う。「おまえは鳩山由紀夫か?」と誰しも思ったに違いない。あの番組はなんとか安倍さんをこき下ろそうとしていた節があったが、小池氏の発言に番組の趣旨を忘れられそうになった。A.Iの普及?財源というよりは、むしろ今ある職がなくなることを加速させる要因のひとつである。

A.Iについてはいろんな議論がされていくと思う。例えばA.Iを活用した自動運転車が普及すれば、現在のタクシーやトラックドライバー120万人が失業することになる。やがて士業に就くひとや、企業の中間管理職たちもA.Iに取って代われるとも言われる。しまいには現職の9割の人々は職を失うともいわれる。こんなの尋常じゃない。産業革命時に起こったラッタイト運動どころの騒ぎで無くなりそうである。

とはいえ企業がA.Iを導入すれば人件コストが下がるのだから、人件費減額ぶんを税として国が集め、失業者に再分配するという手もあるかもしれない。とすれば、日本だけがそんなことをすれば国際競争力が失われ、結局は衰退していくだけである。どのみち、庶民が今より裕福に過ごせそうにはない。家族はいったいどうなってしまうのだろう?

そんな折、まちがいないのは、できるだけコストのかからない自分にしておくことだろう。高齢者が増えることで悩ましいのは経済生産者人口が減るだけではない。高齢者の割合が増えることに伴う医療費の増大である。家計に占める医療費の増大であり、国家予算に占める医療保険費の増大である。その意味で、よくいう健康志向は一時的なブームではない。100年ものライフをいかに未病でいるか、健康ですごすかということに関心が集まるのはごく自然の成り行きなのだ。

健康には無縁、どころか不健康はどこか名誉であるように錯覚していた働き者のおじさんたちもここ10年、かなり健康を気にし始めたように思う。タバコをやめ、酒量を減らした。脂っこいものや塩辛い食事を控えるようになり、夜更かししないよう朝型に切り替えた。早朝の電車の混み具合は明らかに10年前と違う。夜の街がいくぶん寂しくなったのは、なにも不景気ばかりではなさそうである。

健康志向といえばフィットネスクラブに通う人が増えただろうと思いきや、意外とそうでもない。過去10年間の売上推移も4000億円プラス2~5%とほぼ横ばいである。だが年代別に見ると、あきらかに傾向が変わっているのが見て取れる。30代以下の利用者が減り、減ったぶん60歳以上の利用者が増えているようなのだ。まるで未来の日本の人口ピラミッドを先取りするかのように。

年齢別フィットネスクラブ利用者の推移

加えて思うのは、街のあちこちで見受けられる「ストレッチおじさん」の増大である。公園で、駅のホームで、あるいは職場でまたはカフェで、隙をみては身体を動かしているようだ。

 

街でみられる「ストレッチおじさん」

1. オフィス編〜イス屈伸〜

トップバッターはイス屈伸おじさんである。デスクワークが長いと腰に負担がかかる。加えて長く同じ姿勢であるため血の巡りが悪くなる。ただの背伸びだけでは取れない腰の圧迫感は、イス屈伸。これで一発解消である。お腹の重みが自重効果を加速させもする。肩甲骨へ刺激を与え肩周り残りもほぐすという。眠気も覚め、ボケた頭にカツを入れてくれることも。

 

2. 駅のホーム編〜傘素振りおじさん〜

雨の日のホームでみかける傘でゴルフの素振りをするおじさん。周囲に配慮してか、ホームの外れか、空いている時間帯をねらうようである。ぼくはゴルフをやらないが、そのフォームが美しいかどうかはそれなりにわかる。股にカバンを挟むのはお約束のようだが、ちょっとおかまっぽくで味わいがある。効果としては腕や腰のストレッチかもしれないが、おそらく意識はされないだろう。ゴルフが好きだからやっている。それだけのことだ。

それにしてもゴルフの素振りはしても野球やテニスの素振りを見ることは滅多にない。やはりハンドル部分がカギ型なのがゴルフのアイアンを彷彿させるからかもしれない。むかし、一度思い切り背中をこれで叩かれた経験がある。わざとではないだろうが、やはり素振りなら別な場所でやってほしい。

 

3. どこでも編〜アキレス腱のばし〜

おじさんはつい、腰に手を当ててしまう。牛乳を飲むときも、片付けた書類を見下ろすときもだ。このとき足を横に開いていれば静止するだけだが、縦に開いていれば必ずアキレス腱をのばしてしまうから不思議だ。こどものころ、かけっこの前には欠かさずしていた。アキレス腱が切れるとポーンと大きな音がする。あの不気味さを味わいたくない。といった恐怖心がそうさせるのかもしれない。

かかとを上げ、腰を深く沈めればランジになる。大臀筋、大腿四頭筋、ハムストリングも鍛えられて2度美味しい。老化は下半身から。腰に手を当て、おじさんは今日もハッスルである。

 

4. 喫茶店編〜おしぼり顔拭き〜

「これやったらおじさん」などと言われ、若いころは控えていたものだ。どうせおじさんなのだから、と今は欠かせないのが出されたおしぼりで顔を拭くことである。顔をテカらせる脂を拭き取りたいのは女性もきっと同じだろうが、ファンデーションまで取れてしまう。そんなリスクから解放されたおじさんたちはある意味、うらやましがられる存在。それでやっかみ半分でおじさんだと責めるのかもしれない。

また、おしぼりで顔を拭く理由はそれだけじゃない。見落とされがちだがこれ、なにげに肩と腕のストレッチなのである。ひじを正面で上下させることで、肩のコリをほぐし、上腕二頭筋に刺激を与えていたのだ。顔のスチーム効果で毛穴を開いて老廃物を取りながらのそれば、リフレッシュ効果も相まって、気持ちよくないわけがない。惜しむべきは紙おしぼりが主流になりつつあること。だが紙おしぼりはメリットよりもデメリットの方が大きい。資源の無駄遣いと気づき、いずれ社会から糾弾されるであろう。

 

きょうも「ストレッチおじさん」は神出鬼没である。
見かけても、非難したりせずそっと見守ってやってほしい。彼らは一様に日本の未来を案じ、少しでもサステイナブルな社会をと自らを律しているのだ。一見それは迷惑な行為に映るかもしれない。実際のところ迷惑かもしれない。だがほんとうの迷惑は病に倒れ、家族や周囲を不幸にさせることである。医療負担を社会に強いてしまうことである。男性はいつの時代も、ちょっとだけ女性より平均寿命が短い。そんな控えめなところもあわせて、愛してあげて欲しいのだ。ストレッチおじさん。

 

 

2 件のコメント

  • ストレッチは、微笑ましいです。が、タオルおしぼりで顔を拭くのは気持ち悪いです。
    耳の穴まで拭いてる方もおりました。業者が殺菌滅菌してるという人もいるんですが、そのおしぼりタオルで後日だれかが手を拭いてるなんて想像するとちょっと。普通に考えると、お風呂場で顔拭いたタオルはテーブルの上には載らないですもんね。
    ハンドタオルから紙おしぼりに変わって来てるのには理由があるのかも、です。
    私は、タオルおしぼり要らないと力説しています(笑)

  • 深刻な話題だったはずが…次第にクスクス笑えてきてしまいました。
    (๑˃̵ᴗ˂̵)
    なおきんさんの文章はつっかえずにスーッと読めるので、いつのまにかのせられて?気持が変化していくんです。笑
    笑笑

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    なおきん

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを
    めざす。