アインシュタインに救われた迷い道

道に迷ったなおきん

ここ数年、めったに道に迷わなくなった。

ぶれない人生が送れるようになったからだろうか?
ではなく、スマホの地図アプリとGPSのおかげである。自分のいる場所がわかり、行きたい場所を指定すれば、たちどころに道順を教えてくれる。今となってはあたりまえすぎて、ここにあらためて記すまでもない。それでも記したくなるのは、その精度が格段に上がったこと。世界中どの場所でも同じように使えてしまうことにくり返し感動したからだ。

GPS機能は地図アプリさえ端末にダウンロードしておけば、ネットにつながらなくたって位置情報を得ることができる。知らない街でWi-fiもなく迷子になったときなど、どれほど頼もしかったことかしれない。おかげで日が暮れる前にホテルについた。飛行機の時間に間に合った。探している人に会えた。感激屋なら涙にむせぶことだろう。

4つのGPS衛星が見守る道順

だがこのGPS、相対性理論なかりせば存在し得なかった利器である。
なんだとつぜん相対性理論だなんて!ということで、復習の意味も含め注釈してみた。人生、知ったかぶりも大事である。

相対性理論をひとことで言えば「時間や空間は誰にとっても共通ではなく見る人や立場によって異なる、つまり相対的なのです」となる。1秒は誰にとっても同じ1秒ではないのだ。この理論はあまりに斬新すぎたため、20年ほど前までは「相対性理論は間違い」などという書籍がいっぱい出回っていた。ニュートンの万有引力が絶対であり、相対性理論はあり得ないと。ついにはユダヤ人陰謀説まで出る始末(アインシュタインはユダヤ人)であった。このようにして、ことあるごとに疑いの論者が出てきては否定していたのだ。

その相対性理論が正しいことを証明してみせたのが、GPSである。

地球のまわりにはいくつものGPS用人工衛星が旋回し、そこから地表にむけ位置情報と時刻情報を電波で発信している。その電波をGPS搭載スマホのGoogleマップなどで受信すると、発信時刻と受信時刻との差分から位置がわかり、移動先までの速さと時間差で距離を割り出される。これは「速さ x 時間 = 距離」の等式でお馴染みである。

しくみはこうだ。
まずひとつめのGPS衛星が目標がどの球面にいるあたりをつけ、ふたつめが球面を交わらせて場所を絞る、そして3つめの衛星をしてこれら三球面が交わる一点をびしっとわりだす。電波の速さは光と同じ秒速30万km。ほんのわずかなズレが大きな誤差を生む。そのためGPS衛星はどでかい原子時計を積んでいる。なんと300億年ごとに1秒しかくるわないという電子時計。1秒狂うまでに、人類は滅亡しているかもしれない。ていうくらいすごい。だからまあ3つのGPS衛星については心配ない。

問題は受信機であるスマホだ。秒速30万kmの世界にあっては、いささかスマホが刻む時間は心もとない。そこで4つめのGPS衛星が登場し、送信側と受信側の時刻をピタリと一致させる。みごとな連携プレーではないか。

GPS衛星の連携プレー

そのようにして、あなたがぼおっとして道に迷わないよう、最低4つのGPS衛星たちが高度2万km(注:kmです、mでなく)もの空のかなたからはるばる見守ってくださっている。大いに勇気づけられるではないか。神々しさすら覚え、泣き出したくなるくらいありがたいではないか。

ではなぜそこに相対性理論が?とふとあなたは思い出すに違いない。

説明しよう。今回はそのための記事である。

GPSに相対性理論?

相対性理論には、動いているものの時間は遅く進むという「特殊相対性理論」と、重力がかかると時空間が緩み、時間が遅く進むという「一般相対性理論」とがある。時間や空間は観測者によって異なってみえる。動いている人にとっては、止まっている人の時間がゆっくりみえるし、止まっている人が動いている人を見ると時間が間延びしてみえる。離れた場所で起きた出来事が同時刻だったとしても、動いている人にとっては違う時刻に起こったことになるのだ。両者の関係を調べ、得られたのが「ローレンツ変換」という数式である。

GPS衛星にはこのローレンツ変換プログラムが織り込まれている。GPS衛星自身、秒速4km(マッハ11.4)もの高速で動いているから、地球から見るとわずかだけど時間は遅れていく。加えて地表とGPS衛星の高度差は2万km。重力の大きさが全く違う。一般相対性理論によれば、重力の正体は時空間のゆがみとある。GPS衛星のある雲の上と地表では、時間の進み具合に100万分の数秒という差が生まれてしまう。「たかが100万分の数秒なのに?」と思わないでほしい。秒速30万kmの電波の速度からすれば、それだけで致命的な誤差なのだ。時間の誤差は位置を誤り、距離を間違えさせる。

相対性理論がプログラムされていなければ使いものにならないのがGPSである。

世界で初めてGPS衛星が打ち上げられたのが1993年。そのあたりからじわじわと相対性理論を疑う論が減っていき、いまはほとんどみあたらなくなった。

なぜアインシュタインは天才か?

アインシュタインが天才と言われるのは、こうした相対性理論を頭の中だけで生み出したからである。

通常、物理学は実験結果から既存の理論とのズレをみつけ、このズレを正すための新しい理論を探すことで発展している。アインシュタインは、まず頭の中でこれを閃かせ、後に実証していった。順番が普通と逆だから、疑う人は跡を絶たなかったが、水星の軌道発見で一般相対性理論を実証してみせ、GPSで正しさを不動のものとしている。

アインシュタイン

 

ぼくのような多くの方向音痴ピープルを、道に迷う事から救ってくれたGPS。

実はアインシュタインのおかげでもあったのだ。便利でしかないGPSではあるが、反面プライバシーについてはどうなるのだ?という反論もある。

未来は明るいと信じたい。

 

 




道に迷ったなおきん

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なおきん

なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。