悪いことは過大評価されがち

新聞やニュース番組を見ていると暗い気持ちになる。
そんな人が多いと思う。明るいニュースもあるが、暗いニュースのほうが多い。不景気、増税、不正受給に悪質な殺人事件・・、別に今に限ったことじゃない。考えてみれば毎年こんな感じだ。日本はもうダメなんじゃないか、そう思わせられもする。

新聞など大手マスコミが報道するニュースが暗いのは、世相を正確に反映しているからとは言いがたい。そもそも良いことはニュースになりにくいし、だいいち「事件」なんだから悪いことのほうが多い。普通のニュースでも悪い側面にスポットを当て、注意喚起を怠らないのが報道の勤めと思っているふしがある。

たいていのひとは良いニュースより悪いニュースに関心が向く。たとえば1万円得するヨロコビより1万円失うショックのほうが大きかったという意識調査がある。また、2万円ボーナスが増えることより、1万円を落とすことのほうに心奪われやすいものだ。本来差し引きプラス1万円で、得だったのにもかかわらずである。同僚への報告も一万円を落としたほうを優先し、同僚もそっちのほうがネタとして美味しい。

マスコミは話題になる方をニュースにする(でないと売れない)から、当然ニュースは悪いものが増える。一面には悪いキーワードが踊る。読者や視聴者はうんざりするが、いっぽうで話題になりやすい。原発しかり増税しかり中国の暴走しかり秘密保護法案しかり5000万不正受領しかり・・・

そのように人々が利益より損失のほうを大きく見積もってしまうのは、ちっとも不思議じゃない。そうしないわけにはいかなかったのだ。太古の時代から不注意な人間、あえて危険に立ち向かったりする人間は、自分の遺伝子を残す前に死んでいった。注意深く行動した人間だけが生き残り、ぼくたちはその生き残りの子孫である。

社員が健康診断を受けてくれないと悩んでいた担当者は、これまでの「早期発見、治療が必要です」というのをやめ、「早期発見できずに治療が不可能になる危険性があります」と伝えたところ、受診率が高まったと言っていた。海外のタバコのパッケージには”Smoking kills(吸うと死にます)”と書かれ、がんで犯された肺の写真が印刷されている。

何かを失う不安は、同じだけの価値を得るよりも刺激が大きい。株や不動産に手を出さず銀行に預けるひとのほうが多いのも、会社にチャレンジ精神が欠けてしまうのもこれが理由である。うまくいけば2倍も10倍も儲かるかもしれない。だがそのために、資産が目減りしたり仕事そのものを失う危険を犯す必要はない。そう考えるのが、ここまで生き残った者の本能ですらある。

だがそこにワナがある。

ともそれば、生き残るためには「何もせず悲観ばかりしていればいい」ということになってしまう。実はそんなことはなく、人類が生き延びられたのは絶えず変化し続けたり、環境の変化に応じてきたからである。

変革者は常に非難され責められる立場にあるけれど、ぼくたちは生き延びられてきたのは実はそんな人たちのおかげでもある。まわりに叩かれ責められてばかりいる人はいないだろうか? だとしたら注目だ。もしかしたら、そんな人こそ世の中に必要なのかもしれない。

4 件のコメント

  • なおきんさん、こんばんわ。
    1週間の内に、記事を3つもUP!
    ありがとうございます。それも、中味は濃厚ですね。
    秘密保護法については、いつ書いてくれるかと、心待ちにしてました。必要な法律であると、感じましたが、表現の自由が奪われるとか、ジャーナリストや弁護士が反対するのは何故なの?誰も、その疑問をクリアにはしてくれませんでした。
    凄惨な尼崎事件の主犯が、本名じゃない、とネットで取り上げられていて、なぜ本名で報道しないのか、疑問に思っていました。通名だったんですね。
    ここ5日位は、都知事の借金がトップnews。いじめを目の当たりに見ているみたいで、嫌な気持ちになります。返したから良いのではと思うのですが、ダメなんでしょうか・・世の中って、甘かったり、厳しかったり、ギッタン、バッタン、シーソーですね。

  • 「あほ」が個人の範囲で「あほ」であり続ける限り、向けられる視線は「あわれみ」だったり「無関心」だったりするんですが、「あほ」がその他個人の利益を犯す“かもしれない”となると、状況は一変するんですよねぇー。マスのコミュニケーションを握っていると思っている人たちは、“かもしれない”を、いやいや“ぜったいそうなんだー。そうにちがいないっ!”って情報をすりかえちゃってんのかなあ。だとすると怖い世界だなぁと、今になってやっと思うようになりました。
    大きなエゴが作られていて、それに人々がガイドされてしまうという世界は、昔の戦争の時とかわらないじゃん! どころか、メッセージが間接的な表面を保ちながら、直接的に働いてんだから、もっとこわいじゃん!!!と思ってしまいました。
    ところで、[foolish]という言葉に上のイラストの「あほー」っていう言葉が意外とマッチするのかもしれませんねぇ。。。

  • なろほとー!
    なおきんさんの記事には、いつもとても納得します。

    猪瀬知事は、はめられたような気がしてなりません。
    嘘をいっているようには私にはみえないんです。
    東電に圧力をかけたから、邪魔だったんじゃないか?と。
    猪瀬知事のことに注目させておいてるうちに、2030年に向けて原発ゼロは取りやめて、増やすことに決めたみたいですね。
    これと関係ある気がしてならないのです。
    あんなに一生懸命に東電に強くででいてくれて猪瀬知事。続けて欲しかったです。
    気の毒でなりません。中川さんのように薬をもられてないか心配です。

  • Kei3さん、一番ゲットおめでとさまです!
    週に3回更新を目指してますが、たまに2回とかにも!秘密保護法については、本気で反対している人と議論したことがありますが、信じられないくらい法案の内容について理解していませんでした。マスコミの刷り込みにはつくづく恐怖するところです。猪瀬さんについても残念でしたね。偏向報道には注意しましょう。
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    たいさん、
    個人的(新聞社)な意見を「市民は」に置き換えて社説に示す記者がいますね。それ本当に市民の声か?みたいな。「みんながそう思っているなら正しいんだろう」という集団心理に持ってくメディア操作はおなじみですが、やっぱりこわいですね。イラストの「あほー」、うまく解釈してくれてうれしいです。
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    はてなさん、
    猪瀬知事の一件は、ようするに東京都が買い取った東電病院を徳洲会に安く譲らせるよう買収に乗ったのだと思います。心にやましいことがなかったわけじゃないけど、あんな質疑は必要だったか?と思わせるものがありました。ぼくも個人的には猪瀬さんが続けられることを望んでいましたから残念です。故中川議員の疑惑もありましたね。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。