しし唐の「しし」は獅子の頭に似てるから?

 

ししとうは獅子の顔に似ているか?大人はなんでも知っている。
そう信じていた子供時代からすれば、あまりにも物事を知らない今の自分に愕然としてしまう。漢字の読みからはじまり、ことばの由来まで。世界はあまりに広く、思想はどこまでも深い。

ししとうの名称の由来が、「獅子の頭に似ているから」と最近になってから知った。自分の無学さに愕然としつつ、つくづく世界は広いなあと思う。だってしし唐が「獅子」に似ていないのに。

ただ名前の由来が定着するくらいだから、「獅子に見えない」自分の感覚を疑うべきなのかもしれない。目はふしあなで、いちじるしく想像力が欠けている。空に浮かぶ雲を見て「くまのプーさんに似ているな」と思うことはあっても、けっしてシシ唐を見て「おおこれは獅子の顔じゃないか!」とはならない。思いもよらない。これまで半世紀以上、なにかが足りないまま生きてきたのかもしれない。

世の中の人たちは、しし唐をみて「獅子の顔」を想起するのだろうか? 周囲に確認したくてもつい、大人の自分がジャマをする。今さらそんなことを聞けば、きっと馬鹿にされるにちがいない。と躊躇してしまうのだ。

思えばナスはカバに似ているし、きゅうりはウナギに似ている。だが「カバナス」とは言わないし「うなぎウリ」とも呼ばない。獅子に似ているというなら、ししとうよりもピーマンのほうではないか? もしかすると、自分がこれまで見てきたししとうは、それが命名されてきたししとうと違うのかもしれない。とある時代のあるべき場所では、ししとうは獅子の顔そっくりだったのだ。そのことを自分だけが知らない。心のどこかにぽっかりと穴が空いたむなしさがある。

個人的な話をすれば(はじめからずっと個人的な話だけど)、ぼくがししとうを認識したのは20代と遅く、ドイツで暮らしていたころである。”ししとう”はドイツ語で”Bratpaprika(ブラートパプリカ)”という。いまはどうか知らないが、かつては大型スーパーでもなかなかお目にかかれなかった。主ににスペインかポルトガル産で、たまにトルコ産のもあった。ただしトルコ産のものはどちらかといえばGewürzpaprika(ゲビュルツパプリカ)が多い。ようするにトウガラシである。形状はとても似ているのでまちがえやすい。ちなみにピーマンの由来はフランス語の”Piman”であるが、現在の日本ではピーマンもあればパプリカもあるので、いまとなってはややこしい。

さて、ドイツのピーマンはとにかくデカく肉厚で、日本のものとはぜんぜん違う。ドイツ人はこれをサラダにしてぽりぽり齧り、バリバリ食べる。彼らのアゴが発達しているのはピーマンのせいもあると思う。だから「日本のピーマンのようにやわらかいのが食べたい」と思えば、ブラートパプリカで代用するほかなかった、というわけである。

ししとうにはいろんな食べ方があるが、ぼくは「めんつゆ炒め」が好物である。
強めの火加減で熱したフライパンにごま油をしき、ししとうをさっと炒めて麺つゆとかつおぶしをぱらっとまぶす。材料が貴重品という事情もあって、このレシピはドイツでは贅沢品だった。その印象があまりに強かったせいか、日本では安価な食材にもかかわらず、いまだにありがたい。

ししとうマスク

そんなししとうが「獅子の顔」。
そのことを意識して以来、ひとつつまんでみては獅子に似ていないかとチェックするのが日課となった。確信までの道のりは遠いが、緑色をした獅子舞も存在するので意外とそうでもないのかもしれない。だからどうした?といわれれば、それまでだけど。

 

ししとうは獅子の顔に似ているか?

2 件のコメント

  • 初めて知りました!!!どこが獅子なのかさっぱり・・・・。むしろ大きさと形ではオクラとごっちゃになりそうな。唐辛子との方が限りなく近いですよね^^;
    獅子舞のミニュチュアがたくさんできそうですね。

    • よかった!同類ですね。名称が残るくらいだからそれなりに普遍性が認められてのことだとは思うんだけど、それにしても獅子に似てないですよね。いつかそっくりなのが見つかったら報告するつもりです。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。