インレー湖(ミャンマー4)

ミャンマーに行くまでは、インレー湖のことなんてなにも知らなかったのだけど、バガンのホテルで知り合ったスペイン人から「湖の上でトマトが栽培されていて、脚でカヌーをこぎながら漁をする人たちがいる」という話を聞き、いってみたくなった。

ぼくの旅の好奇心なんて、いつもそんなものである。

バガンから直行便で一時間。
シャン高原にあるへーホー空港に降り立つ。
と思ったら、同便が航空会社の都合でマンダレー経由に急に変更。
結局到着まで3時間かかった。ミャンマーではわりとあるようだ。

空港からインレー湖そばのホテルまではタクシーしかない。
しかも山をいくつも超えるのに、頼りないおんぼろ車。

折しもスコール。やはり雨季なのだ。
山間では、フロントガラスを突き破るんじゃないかと思うほどの大きな雨粒に見舞われる。なるほど土砂崩れのあともある。トマトとカヌー見たさの対価に、土石流で谷底に突き落とされたくはない。

途中、斜めの遮断機に止められ、外国人は5USドル徴収された。

ホテルにチェックイン後、雨の中、村をぶらつく。

スコールに立ち往生し、民家の軒下で雨宿りをしていると、
「ここにすわんなさい」と家人に椅子をすすめられた。


▲ 突然のスコールで雨宿りをする子供たち


▲ 5日ごとに付近の少数民族の人たちが地元の産物を持ち寄る市場


▲ 魚の干物の開き方がユニーク

ボート乗り場にでると、客引きが何人も集まってくる。
そのうちの一人と一日20ドルで、翌日ボートをチャーターした。
願いも虚しく、翌日も雨だったが。


▲ 流行りなのかバイクのヘルメットがナチス・ドイツ軍のヘルメットを模している


▲ 急に思い立ったように祈りだした店の売り子

ジョディは朝8時にホテルにやってきた。
英語はあまりうまくない。だが誠実そうである。
お世辞にも裕福とは言えない住宅街を横切り、船着場とはちがう運河のほとりまで歩き、そこで彼の(お父さんの)ボートに乗り込む。10メートルくらいある長細い緑色のボート。そのまんなかに椅子がひとつ、固定されている。オレンジ色のライフジャケットがクッション替わりだ。

写真ではとても美しいインレー湖も、雨雲の下では泥水色。
運河から湖の近くまで来ると、ジョディは手漕ぎをやめ、勢いよくチェーンを引き、発動機を回す。乾いた2サイクルエンジン音がパンパンパンと雨粒にこだまする。


▲ 鉛色の空から矢のような雨が降る

止まっていれば垂直に降る雨も、走るボートの上では暴風雨である。しかも寒い。だのにぼくは半袖のポロシャツにサンダル姿。バッグに忍ばせていたポンチョが大助かりだ。タオルをマフラーがわりに首に巻く。
まるで黒いてるてる坊主のようなかっこうで、ボートの先でカメラを握りしめる。バリバリバリ。パンパンパンパン。

▼その時の様子を映画予告っぽく動画にしてみました

しばらく走って雨が止む。
ジョディがエンジンを止める。

なにかと思ったら、カヌーが数隻、近くにいた。
あの足こぎカヌーたちが付近で仕掛けをしているのだ。
ジョディがカメラを構える仕草をした。
シャッターチャンスだということらしい。

細長いカヌーの先端に片足で立ち、もう片方の足で器用に櫓を操る独特の漕法。すごい!と思わず拍手する。漕ぎ手は慣れているのか、手を振り返してきた。

▼これがその足こぎです

湖面には水草があちこちに浮いている。
どこからかわかめのような匂いがする。

竹で組んだ筏に、水藻を厚く敷き詰めた浮島がある。
トマトはその上で栽培されていたのだ。ほかにトウガラシやその他の野菜もみられる。魚と野菜が湖で自給自足できるからか、湖畔には高床式の住居がずらりと並んで建っている。


▲ 湖に浮かぶ畑


▲ 湖でとれた魚の唐揚げとトマト【水上レストラン】

夕方になると、雲の切れ間から陽がさしてきた。
ポンチョをたたみ、空を仰ぐ。
湖畔がキラキラと輝いているところもあれば、まだスコールに叩かれている場所もある。スコール雲は低く小さい。

▼立ち寄ったガーペー寺院名物の輪くぐりする猫

気づけば顔がヒリヒリしている。
知らず、日焼けをしてしまったようだ。
足先がサンダルの形に赤銅色に染まっている。

だが夕日が空を茜色に染める前に、ふたたび雨雲に覆われた。
あわててポンチョを広げるが、スコールに追いつかれた。
お決まりの暴風雨のなか、船着場へと戻る。

ジョディが運河のほとりの家の一つに声をかける。
とたんに、家の奥から女の子と男の子が飛び出してくる。

「妹と弟です」と、びしょ濡れのジョディはニカっと微笑んだ。

水もしたたるいいお兄さんである。


▲ シャン族の子供たちの制服が可愛かったので思わずスケッチ

10 件のコメント

  • いつもなおきんさんの旅行記を拝読すると、当たり前のことなんだけど、つくづく世界は広くて、普段気がつかない、私の知らないところでいろんな人々が生活していて、夫々文化を営んでいると気がつかされます。自分が心地よくhumbleになれます。
    どうもありがとうございました。
    残りのご旅行どうかお気をつけて!

  • なおきんさん、おかえりなさい!
    動画が面白くて大笑いしちゃいましたぁ。
    特に一番目の。
    お疲れの様子、ゆっくりおやすみくださいね。
    そういうわけにもいかないのでしょうが、睡眠は大切ですよ。

  • おかえりなさい!
    お疲れさまでした。
    ミャンマー旅行記、とても楽しませていただきました。
    とくにこの記事の動画は、とても面白かったです。
    インディジョーンズみたいな編集に爆笑しました。
    色々な写真と文章を拝見して、日本以外の国には、それぞれ独特の文化や習慣がまだ当たり前に残っていることを
    羨ましく思いました。
    一枚の写真を見て、「これはあの国かな・・・」と想像すること、
    それはとてもワクワクするのですが、東京の風景をどこか一枚切り取っても、
    日本らしい! と思える場所は外国人に好まれる観光地ばかりのような気がしました。
    帰国されても、お仕事が忙しいのですね。
    体調不良とのこと、おうちではゆっくりお休みください。
    ちびきちくんほどではないにしても、なおきんさんが東京にいらっしゃらないこと、勝手に寂しく思っていました。

  • インディ・ジョディ……

    自分は安全圏に居ながら、こういう異文化の旅を見ると何だか夢のような感じがします。。体験するとまた全然違うんでしょうね。とても興味深かったです。

  • こんばんは。
    ミヤンマーの空は雨で、残念でした。
    ミヤンマーの色は、レンガ色と金。
    写真からそんな風に感じました。
    人々は貧しいのに、寺院は金ぴかなんですね。

  • 足こぎボート・・・見てるだけで足がつりそう・・
    日本に比べてお金はないのかもしれませんが、いい笑顔してますね。これも幸せの定義の一つでしょう。
    私も、日々笑顔で過ごしたいものです。

  • 最後の彼の、穏やかな笑顔。いいですね。
    家族を守っている自信で満ちている。
    今を生きている実感が、そこにある。

    いつか、気が遠くなるくらい先、

    自分達が生きている、この時代は、
    どういう歴史の1ページとして、旅人の心に刻まれるのだろう。

    この旅行記を読みながら、ふと思いを馳せる。

  • こんにちは。

    ミャンマー旅行記、四部作。

    非常に濃い内容でブログでありながら臨場感も感じました。

    「凄いなぁ」

    厳しい通信環境でのブログ更新、お疲れさまでした。

    今回の「旅」の記事を拝見して未知の文化に触れて自分を見つめなおす作業の困難さと素晴らしさを教えてもらった感じがします。

    それにしても中国は変わりましたね。自発的な民主化で国民性が育っていったなら理想的な民主国家を掴むまたとない可能性を感じさせます。

    これもネット社会が生み出した人の新たに可能性を示した形でしょうか?

    日本も負けてられないですね。

    失礼しました。

  • なおきんさん、お帰りなさい!
    ボートの動画、臨場感たっぷりでした。
    それにしても、なおきんさんの多才ぶりとおちゃめさに
    当の本人は、笑っている場合じゃなかったであろう場面を
    笑いながら楽しみました。
    今回の旅で、日頃のストレス解消ができたようご様子、何よりです。
    さらにパワーアップしていかれるであろうこのブログを
    これからも楽しみにここへ通いますネ。^^ノシ

  • あんじぇらさん、一番ゲットおめでとさまです。
    そうです。つくづく世界は広くて人生は短いものです。旅をするとそのことを痛感します。その地の歴史を勘案すれば人の生涯なんて米粒ほどもない。そう思うのが心地いいんですね。
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    risaさん、ありがとうございます。今回の旅は、現地更新の頻度を犠牲にして、そのかわり写真素材と動画作りに凝ってみました。大きな画像でおみせできないのが残念ですが、まあ大きくしたところでどうなるわけじゃないんですけど。
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    ユーリさん、ただいまです(だいぶ前ですが)。動画を楽しんでもらえて光栄です。あれもマックのおかげでちょいちょいっと出来上がります。スゴイですね。これからも記事に動画がちょくちょく出てくるかも、です。ちびきちを映画予告編のように撮ってみようかなとか。
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    トランポリンさん、ふふふ。インディ・ジョディ・・。実ははインレー湖での撮影だったので、『インレー・ジョディ』というふうな隠しごころがあったのでした。ふふふ、どうでもいいですね。ふふふ。
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    ニモさん、そうです。煉瓦色と金色。坊さんの袈裟の色が煉瓦色で寺院や仏像が金。日本での日常ではあまり登場しない色なので、印象的でした。いわれるとおり、人々は貧しいのに寺院は金ぴかなんです。
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    おととさん、そうですね。足でろをこぐ姿は本当に職人芸でした。あれでスイスイ前に進んでましたからね。カヌーの後ろの部分が写ってなかったですが、もちろんだれものってません。エンジンも付いてません。幸せといえば、みんななんだか幸せそうな顔をしていました。なによりです。
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    じゅんじゅんさん、最後の写真は実は最初にジョディにあった頃の写真なんですが、始終、あんな顔でニコニコしてました。ボートでまわっているとき、土産屋さんに立ち寄ろうとするので「欲しくないから先に行ってくれ」と制した一瞬だけ、ふっと笑顔が消えましたが。思いを馳せていただき光栄です。
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    じさん、結局ただの旅行記になってしまいました。なかなかネタになりそうなエピソードもなく、淡々と日々を過ごしていました。それでも十分刺激的でしたが。変わる中国、変わらない中国。変わる世界。変わらない世界。ぼくたちは傍観者であり、舞台役者でもあります。
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    jamさん、ボート動画気に入っていただき感謝します。ちょっとへんてこな顔が挿入されちゃってて、ごめんなさい。ぜひ、これからもイラ写を応援いただければうれしいです。おかげでがんばれます。

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    なおきん

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。