やるとやらないでは大違い、脳を味方にして集中力を得る方法

ぼくは2016年4月に会社を辞め、独立した。
それ以来、誰にもジャマをされず日々黙々と仕事をし、たまにふらりと旅に出ながら暮らしている。「なんだか優雅だね」そんな声も聞こえてきそうだけど、たしかに優雅と言えなくもない。自由な時間がどれほどありがたいか、あらためて気づかされた。

自分の時間は確かに増えた。
これなら誰にもジャマされない。と思いきや伏兵がいた。

自分である

気が散って集中力が妨げられることを、ぼくは「自分にジャマされる」という。やるべきことをしている最中、または取りかかろうとするとき、何か別のことを始めたり、意味のないことをしてしまっていることを指す。そのため、2時間で終わるはずだった作業が、3時間も4時間もかかったり、場合によっては翌日に後回しにされたりもする。自由な時間と、時間のムダ使いをはき違えてはならない。

 

ある日のデスクの上。読書も基本椅子に座って、目が疲れた時のために緑を配しています。

集中力について考えてみる。

そのためには、脳について知る必要がある。やるべきコトにとりかかれなかったり、集中力を削がれるのは、実はあなたのせいじゃない。脳のせいである。さらにいえば視覚のせいである。脳は、目から入った情報にもっとも影響を受けている。「メラビアンの法則」によれば、視覚が55%、聴覚は38%、内容では7%影響を受ける。この法則は対人においても同じ。ぼくたちは普段、初対面の人を見かけ55%、声38%、話す内容7%で、どういう人であるかを判断している。内容なんてたったの7%である。どんなにいいコトを言っても、見た目のほうが優先されるなんてあんまりじゃないか。

そんなわけで、脳に余計なものを見せてしまうと、これがなかなか覆せない。見せたら最後、逆らえないのはあなたが意志薄弱だからじゃなく「脳の性格」というわけだ。ぼくがテレビを見ないのはそういう理由もある。見るつもりがなくても見てしまうのは、そこにテレビがあるからだ。もっといえばリモコンをテーブルの上に置いておくからだ。外出先から帰宅し、テーブルのリモコンに手が伸び、テレビをつける。それは自動で、ほとんど無意識に行われる。しばらくそれを見てしまっている自分。ちょっと待て、帰ったらすぐに取りかかろうとした作業はなかったか? または風呂に入り、さっさと寝てしまうんじゃなかっただろうか?

「寝不足なんだよ」とあなたはいう。
だがそれは夜中に見続けたテレビのせいではなかったか? またはパソコンやスマホで何か閲覧していなかったか?やるべきことがあったのに「その前に少しだけ見て、やればいい」となっていたかもしれない。

目黒川にて LEDがまるでホタル

 

視覚は脳に強い影響を与える。依存症の原因でもある。「一度見たら、やめられない」繰り返すけど、あなたのせいじゃない。それが脳の性質なんだから仕方がないことである。だから脳に見せてはならない。一度みせたものをやめさせるのには努力がいる、意志の力がいる。相応のエネルギーである。疲れて家に帰宅し、もうそんなエネルギーなんて残っていない。弱みにつけ込む視覚の力。これがもう本当に侮れない。テレビショップはそこを狙い、深夜放送でガンガン流す。高額なネットショッピングの注文も、夜中の時間帯が多いとデータが示している。

集中力。妨げるのは視覚。
だからデスクの上に余計なものを置かない。やるべき作業を妨げないようにするためだ。だから、できる人は机の上がキレイというのは一理ある。やるべきことに必要なもの以外、視覚に入れないこと。漫画を置かない。フィギュアを置かない。目の保養の植物はいいとして、関係のないノートも置かない。スマホなんて引き出しにしまうか、カバンに入れたままにしておくのがいい。映画館、劇場内でするようにするのだ。スマホはオフ。大きな音を立てない。前の席を蹴飛ばさない・・・スクリーン以外のものが目に入らないようにする。

脳は見てしまったものに反応する。
大脳の中心にある「大脳基底核(だいのうきていかく)」が働くためだ。視覚から得た情報を指令に変える。これは「モデルフリーシステム」といわれる。テレビのリモコンに手が伸びるのも、冷蔵庫の中のケーキに手が伸びるのも同じ。

だが冷蔵庫の中にケーキを見つけても、それが夫のだったり娘のものであれば、手を伸ばさないはずだ。そう、あなたは一度、それについて吟味する。テレビのリモコンが目に入っても、踏みとどまってテレビをつけない。こうした吟味を行う脳のシステムは「モデルベースシステム」といわれる。

「モデルフリーシステム」と「モデルベースシステム」。
前者は大脳基底核の働きで、後者は前頭葉の働きである。どちらも無意識で働く機能だ。無意識なのだけど、前頭葉のやることはいちいちエネルギーが要る。脳内のせめぎ合いが起こると激しく神経が活動するからである。老化などで前頭葉の機能が落ちるのはそのためだ。キレやすくなり、エロくなる。老害は前頭葉の衰えが原因だ。本能に近い行動に出やすくなる。

脳のエネルギーは有限である。
だからできるだけ「モデルベースシステム」を発動しないようにしたい。本来やるべきことに脳のエネルギーを集中させるためにも。いったん脳に見せてから「やってはならない」とせめぎ合わせるのは、消耗でしかない。脳に見せないこと。これが一番いい。

部屋を片付けておく。
というのは「脳に余計なものを見せないようにする」ためでもある。しまわれたいた本や食べ物が出ていると、視覚はそれを捉える。手が伸びるかもしれないし、伸ばさないかもしれない。モデルフリーシステムが働くか、モデルベースシステムのいずれかが働く。いつもの場所にしまっておけば、こうしたことは起こらない。脳は速やかにやるべきことに取り掛かれる。わざわざ脳に余計な消耗をさせることもない。

 

北部タイのパーイにあるホワイトブッダの前で座禅。ミャンマーとの国境はすぐそばにあります。

自分で自分のジャマをする。

それは脳のせいであった。視覚のせいであった。デスクの上を整理し、部屋を片付ける習慣を心がけるのはそのためにもいい。いらないものは部屋にもちこまない。デスクの上に置かない。出したらしまう。使わないものは処分する。どれも、脳に自分をジャマをさせないためである。

最後にもうひとつ。
寝つき良く、ぐっすり眠るためには、ベッドに本やスマホを持ち込まないこと。本を読んでいるうちに眠くなる、という経験を再現したいのかもしれないけれど、実は脳は休まらない。ベッドに入ったら眠る。これをモデルベースシステムにすること。本を読む場所なのかスマホをいじる場所なのか、そのように脳にせめぎ合いを起こさせないためにも必要である。ぼくはいつも手首に「UP3というウエラブル活動量計」をして、自動的に睡眠時間とその深さを計測している。それでわかったのが、ベッドに何も持ち込まないでいると、そうでなかった時よりずっと寝つきが早く眠りが深くなった。日中、眠くなることがなくなった。

チェンマイでは大仏を眺めながら眠ることもありました

 

自分の時間をコントロールする。
そのためにデスクの上や部屋を片付けておく。
ベッド周りに余計なものを持ち込まない。
スマホをアラーム時計にするのはもってのほか。

それを心がけていると、気持ちがいい。
朝目が覚めてからのスッキリ感がまるで違う。
ともあれ一石二鳥である。試してみてください。

 

1 個のコメント

  • 視覚の影響ってそんなにも大きいんですね!
    要らないものを手放して、スッキリ片付いた環境に身を置くと運気がアップすると言われる理由が分かった気がします。
    目標達成のいちばんの邪魔者は、他でもない自分の本能に負けた脳の働きなのか!と、ハタと膝を打ちたい気分です。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。