クルマをガソリンで走らせたのはだれ?

f:id:naokin_tokyo:20090313053547j:image

ここ数年はろくにハンドルを握らないぼくも、ドイツに住んでいた頃はさすがにクルマなしでは生活できなかった。 買い物や旅行はもちろん、国外出張でも大いにクルマを利用した。 年間走行距離は、だいたい20万キロだっただろうか。 スペインのバルセロナからドイツの自宅まで、給油以外は休みなく12時間ぶっつづけで運転したこともある。

長距離運転中は、とにかくヒマである。
もう、運転していることを忘れちゃうくらいヒマである。 ぼくは眠気と戦いながら、ポットのコーヒーを飲んだり、ガムをかんだり、音楽に合わせて歌を歌ったりしながら、実にいろんなことを考えていた。
担任の先生を幼稚園から大学のゼミ講師まで羅列してみたり、今までつき合った女の子の名前を想い出してみたり(わりとすぐ終わる)、真珠湾攻撃に参加した旧日本海軍の艦船の名前をひとつずつ挙げてみたりしたこともある。

何しろヒマである。
スペインからドイツまで運転すれば、ビートルズの全ナンバー278曲が、それこそぜんぶ聴けちゃうくらいの距離である。

 

なんでクルマはガソリンでしか走れないんだろう?
そんなことをふと、考えてみたことがあった。

昔どこかで読んだ本で、19世紀の終わりごろのクルマはガソリンではなくアルコールで走っていたことを知った。 全世界で1500万台売れたというフォードT型は、アルコール仕様とガソリン仕様のどちらかを選べたとその本にはあった。

あらためて調べてみると、それまでクルマといえばアルコールで走るものでガソリンではなかった、とある。 このことはほとんど知られていないし、文献も少ない。 20世紀はじめ当時、石油から利用していたのはランプや暖房用の灯油だけで、ガソリンは廃棄物でしかなかったのだ。

なにしろガソリンは火を近づければ爆発するし、燃やせば一酸化炭素や窒素化合物など有害物質が排出される(アルコール燃料では排出されない)。 おまけにアルコールに比べてオクタン値も低ければ、1リットルあたりの燃費も悪い。 取り扱いが厄介なうえに環境にも悪いとなれば、ちっともいいことがないじゃないか、と思うのがふつうだろう。

わざわざガソリンに切り替えるなんて、当時の人たちはバカだったのか? そんなことすら思う。
おまけにガソリンは石油しかとれないけれど、アルコールはどんな穀物や植物からでも醸造される。 酒を思い浮かべればわかるけど、米からも麦からも芋からもトウモロコシからも、さらにブドウからも杏からも、あるいは雑草からだってアルコールは作れる。 アルコール醸造なんて、もう何千年も前からの産業だ。 18世紀頃のアメリカでは醸造機くらい、どこの農家だって持っていたのだ。

とにかく肝心なのは、石油は特定の場所しか採掘できないのに対し、アルコールは世界中のあらゆる場所で醸造出来るということだ。 もちろん日本でも、ね。

 

クルマ先進国アメリカで、最初のガソリンスタンドが出来たのが1920年。 おそらくこのあたりが「燃料の切り替え時期」だったのだろう。 それは、「その後の世界の運命の分かれ道」でもあった。
では、前年度の1919年に何が起こったか?

”アメリカ禁酒法”である。

世紀の悪法とも、バカ法ともいわれる禁酒法だ。
不思議なことに、このころ世界のあちこちで禁酒法が成立している。
あれこそが、いまの世界につながるジャンクションであったのだ。

禁酒法といえば、そもそも「酒場で亭主が飲んだくれて家に帰ってきやしない」 という不満を爆発させた女性たちや潔癖性なひとたちの禁酒運動から始まったように思われているけど、実態は飲料用アルコールの禁止だけではなく、産業用アルコールの製造、販売、流通の全面禁止でもあったのだ。 すなわち、クルマの燃料としてのアルコールが禁止されたということだ。
当時、アメリカで消費される石油の90%はスタンダード石油という会社が取り扱っていた。 その経営者はだれであろう、あのロックフェラー家であった。

 

それまで灯油だけを採取して、残りは川に捨てていたというガソリン。 これをなんとか換金化したいと考えるのがビジネスマン。 当時から米経済界を牛耳っていたといわれるロックフェラーなら、なおさらであろう。

 

ここでピンときたあなたに、もう説明は不要だと思う。

想像してほしい。
クルマだけではない。 あのままガソリンでなく、アルコールだけで動く内燃エンジンが世界中で普及していたら、今の世界はどんなふうになっていただろうか?

世界中のあらゆる内燃式タービンを、あるいはピストンを、石油ではなくアルコールで動かしていたなら、今日世界が抱えるどんな問題が解決されていただろうか?

エネルギー問題、環境問題、石油価格乱降下、中東問題・・・、数々の問題は問題ではなかったろうし、世界はもっとシンプルであっただろうと思う。

1941年当時、日本が開戦に踏み切ったのも石油、いまだに戦争がなくならないのも石油のせい。 となれば、死ななくて済んだ人々、戦災で家族を失うこともなかったかもしれない。

 

飲んだら乗るな、飲むなら乗るな。 だが、
アルコールを飲むべきは、むしろクルマであるべきだったのだ。

 




5 件のコメント

  • はじめまして。いつも、お気楽ブログばかりを読んでいましたが、たまにこういうのを読むと、身がしまる感じがします。世界の闇の部分、ぞっとしますね。

  • 何処にでもいらっしゃいますよね、メチャクチャお酒の強い人。
    私の上司(50代)もそのタイプ。
    ビールだ焼酎(ロック)だ、さんざん飲んだ後、冗談で注文したその店で一番強い泡盛をロックでチェイサーを一滴も飲まずケロッと飲み干してました。
    (ちなみにこの方のご友人は、「腹減った〜」と言いながら、コップで熱燗をクイクイいく人とか、盛りだくさんです)
    友人とこっそり二次会の約束していた「○○○へ行こう!(シャンソンが聴けるお店)」
    他のメンバーをさっさとお見送りし、いざ!シャンソン!と思ったら、忘れてましたいつのまにやら大酔っぱらいに変化されあのお方を。
    こうなたっら最後までお世話せねばなりません。(なぜかこのお方のお世話役は暗黙の了解で私に決まっています)
    お店が近づくにつれ、ご陽気度もアップ。
    肩を抱くつもりが、身長差がわからなくなっているので、首絞めてるよオヤジ!!って感じで、お店に着いても超ご機嫌♪
    お隣になった素敵な紳士とお話をしていても、ちゃちゃを入れてくる始末。
    そこで優しい部下である私としては、ママに「すいませんママ、あの方にエチルでもメチルでも何でも良いので流し込んでやって下さい」(^^)
    ママも一応笑顔でしたが、ひいてました。
    隣の紳士もボソっと「メチル…」と呟き、程なくしてお店を後にされました。

    長々とな〜んの意味もない駄文ですが、禁酒法の時代にもこんな愉快(おバカ)な仲間達っていたのでしょうか?

    ちなみに、上司の名誉のために付け加えおきますが、世を忍ぶ仮の姿(昼間?勤務中?)のこのお方は、メチャクチャ切れ者です。

  • アルコールで走る車。
    ロシアの恐ろしく冷え込む極東地域で、粗悪なガソリンでは発動しない車にウオトカを入れて走らせているとかいたとか(^^ゞ
    一部の人間の、自分たちの利害だけで強引に作った流れに乗っけられてパレードを続けてきた超大国の国民も、その国に挑み破れ隷従してきた卑屈な島国の国民も、自国を分断されてなおかの国を後ろ盾にし頼り切っている海を隔てた隣国も、もうそろそろ能天気から脱して本気になるべきだと自覚するべきだと思うのです。
    デイ・アフター・トゥモローは決して絵空事じゃないって、十二月に雪が降らず、一月二月に雨が降り、三月に猛吹雪に見舞われた北海道で、一人当世事情を憂い、今シーズンもストーブをつけなかったあたしなのでありました(^^ゞ

  • なおきんさんはじめまして。
    アルコール(エタノール)への移行はインフラ、特にスタンドが相当時間がかかるでしょうね。環境やその他のメリットが沢山ある訳だからアメリカ、ドイツ、日本のような自動車大国がリスクをしょってでも国主導でやらないとメーカーも量産できないでしょう。
    なんでか昔、といってもそんなに遠くない昔までパソコンがメーカーごとに仕様が違って互換性がなかったことを思い出しました。

    なおきんさん年間走行距離20万キロは絶対に不可能な数字ですよ!?

  • Locoさん、一番ゲット、おめでとさまです!それから、初コメント、ありがとさまです。 ここはもともと社会派ブログでもなんでもないんです。 ただ普段思っていることを記事というお題にして、みんなの意見を聞いてみたいな、と。 これからもよろしければお付き合いくださいね。
    —————————-
    faithiaさん、酔っ払いのお世話、いつもおつかれさまです。 なんというか、faithiaさんのような方がいらっしゃると安心してお酒が進みそうです。 ぼくも、めったにないとはいえ、記憶を失うほど飲むことがあるので、機会があれば介抱してやってください。 禁酒法は悪法だと思いますが、個人的に禁酒してほしいひとはわりといますね。
    —————————-
    Yulicoさん、ガソリンで動かない車がウオッカで動くのも愉快ですね、ロシア。 馬鹿パレードも、能天気というよりは巧妙に仕掛けられた感じがしてぞっとします。 ケネディ以外は米大統領も彼らに操られていたといいますからね。オバマさんも彼らの手によって当選(させられた)となっています。レーニンも毛沢東も彼らが仕掛けた駒というから、これはもうえらいことです。 怖いですね。
    —————————-
    nyororikoさん、初コメント、ありがとさまです!
    1900年初頭ならともかく現在のエタノール燃料政策は、食料を高騰させるための仕掛けといいます。 本来、食料ばかりをアルコール原資にするのもヘンな話ですしね。 各社OSがバラバラの時代、ありましたね。 DOSならともかく、Windowsも3.1まではNEC版、TOSHIBA版、IBM版というふうに分れていたもんです。 ややこしかったですがSE会社はかなり儲かったということです。

  • faithia へ返信する コメントをキャンセル

    メールアドレスが公開されることはありません。

    ABOUTこの記事をかいた人

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。