香港で生きるには

離れるたびに日本について思うのは、
礼儀正しく清潔で、日本語が通じる便利さと引き替えに、
相応の対価を払わされているというリアリティだ。

頭をひとつぶんひっこめて、呼吸を浅くし、気配を少しだけ消す。
そのようにして暮らしていれば、日本はとても過ごしやすい。
周囲の迷惑にならないし、誰の敵にもならなくてすむ。
ありがたい。 もとよりぼくは争いを好まないのだ。

香港に来るたびに感じるのは、その音と匂いと色。
人の話し声や街の騒音、食べ物や人間やダクトから漏れる匂い、
赤や金、オレンジやパープルといった色彩。
これらが五感にドルビーサウンドさながらつきささってくる。
コントラストが鮮明になり、音量がぐんと上がる。
鼻のつまりがとれ、皮膚がむき出しでひりひりする感じ。


△ 香港の不夜城SOHOにたたずむ

生きることはしんどいし楽しい。
悲しいし痛い、激しく、そして愛しい。
ひとはだからこそ生まれてきたのだろう。
日本で2年間過ごすより、
香港に2日間いることでより鮮明になるのは
そんな、生きることのリアリティである。


△ 香港フェリー乗り場から高層ビル街を望む

ひとはもっと怒っていいし、笑っていいし、泣いていい。
もともと、そのように作られているのだ。

誰のためにそれを言い、
誰のためにそれを言わないのか?
ときに遠慮はただの「手抜き」である。


△ ハリウッドロードを走るタクシー

香港で生きていくのは自転車をこぐようでもある。
こぐのをやめれば、倒れるのだ。
倒れても、誰のせいにもできない。

日本で同じことをすれば、
会社のせいにできるし、政府のせいにできる。
それが幸運なら、いったい何が不幸なのだろう?


△ 香港からフェリーで30分、ラマ島のオープンレストランで

背筋をぴんと伸ばし、呼吸を深くする。
空気は東京よりも汚れているが、かまわない。
五感を取り戻すには、ある種の「汚れ」も必要なのだ。

おそらく。

来たと思ったらもう帰る日に。でも日本はぼくにとって「帰る」場所なのかどうか、まだよくわからない

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13 件のコメント

  • 香港にいらっしゃってたんですね。
    香港は、行きやすい場所だと思います。でも、ずっと気を張っていなければならないし、走り続けていなければ、おっしゃるとおり倒れてしまう。
    リアリティ=現金 になってきているのが手に取るようにわかる今日この頃です。

  • マカオ、楽しかったですね。
    女房が旅券見て、「マカオに行ったんだ、何度も...」
    うなずいておりました、何年も前に。中華料理もおいしか
    ったけど、ロシア料理もいけましたね。飲みすぎ、食べす
    ぎで思い出しゲップが...

  • 『生きることはしんどいし楽しい。
    悲しいし痛い、激しく、そして愛しい。
    ひとはだからこそ生まれてきたのだろう。
    日本で2年間過ごすより、
    香港に2日間いることでより鮮明になるのは
    そんな、生きることのリアリティである。』
    ここの部分大好きです。そう、そうなの!と激しく一人で同意してます。なんだか分からないけど、スッキリしました。
    私にとって、日本=東京の生活しか知らないけど。それも、何か違う気がするのです。

  • 香港いかがですか。わたしもいきたい。
    時に遠慮は手抜き・・・ぶつかることが嫌で、避けてきたけれど
    でも必要な時もあるんですよね。
    あぁ、あんにゅい。
    おやすみなさい。

  • 日本だけでずっと住んでいれば分からなくて済む幸せってあると思う。
    下手に海外に住んでしまうと、「日本に戻りたくても戻れないことに葛藤し」、いざ日本に帰ってきたものの「どこか浮いている自分を感じながら」「どこかで日本人の中での気楽さに甘え」「どこか怖さを感じながらメディアの中てバカとして染まろうとしている自分に気づき」「時間の経過に心が置き去りにされていく」…こういうことを感じてしまう。

    いやね(笑)

  • 話は変わるけれど、ラマ島の海鮮もいいけれど、長州島のカレー屋さんもいいわよ。店名が「モロッコ」というのが笑えるけれど(笑)。
    まだあるのかしらねぇ?

  • ずっと読み逃げですみません。なおきんさん、さすがです、ちらっと香港にいらしただけで、すぐ、香港の感覚がよみがえるんですね…。生きることのリアリティ、私も激しく同意です。私も争いは望みません、ですが、そのリアリティのど真ん中にいて、もう日本には帰れないかも、と思う、香港13年めです。。

  • あらら こちらにこられていたんですね。
    引越しでしばらく来ていませんでした。
    お会いしたかったです。
    私もしんどい香港生活が続いていますが、なんとか楽しみながら生きています。
    今度は声かけてね。

  • おかえりなさい
    ひさしぶりの香港楽しかったようですね
    なおきんさんが書かれてた感覚、すごくわかります。
    毎年バンコクに行くのですが同じ気持ちになります。
    目的はいつも同じ場所で寝ている野良犬が生きているか確認したいからですけれど。
    ご機嫌で寝ていたらすごく幸せな気分になります

  • naho@HKさん、一番ゲットおめでとさまです!
    お久しぶりでございましたが、香港に行きながら連絡もなくごめんなさい。 お金もリアリティのひとつですね。 社会保障の類が日本ほど手厚くない香港は、老後も病後も自分自身で守らなくちゃならないしんどさがありますね。だからこそ身内を守るというコンセンサスが強くなるんでしょうけど。
    ——————————-
    昔の同僚さん、「マカオに行ったんだ、何度も」という奥様に深く同情いたします。それにしてもいつの間に何度も行ってしまったんでしょうか(笑) ロシア料理も中華料理もそれこそ店ごと食べる勢いでしたね。なかなか楽しい思い出です。
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    8-8さん、なんだかわからないけどすっきりしていただき、ぼくとしてもうれしいです。東京はいい意味でも悪い意味でも、セーフティネットが随所に張られてて保護されている気がします。それはいいことには違いないんですが、物事のリアリティが薄まり、生きているという実感すらも薄めてしまうことにならないだろうか?なんてことを思ってしまったんでしょうね。
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    りんごちゃん、「遠慮」というのは実はずるいんです。 ほんとうはぶつかって主張し合うところを、あるいはそれが正しいことだとしても、それをやらず「遠慮」という他己主義で隠してしまう。 衝突を恐れない香港人のメンタリティをときにうらやましく思うのは、正直であることから目をそらさないところですね。
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    ティーママ、2本連続コメントありがとさまです! 「海外帰りな人たちの国内ジレンマ」は、当事者それぞれにあるでしょうね。日本の常識を疑い、何か違和感を覚えながらもそれに抗えない自分。 外を知らなければ悩むこともなかったかもしんないですしね。長州島のカレー屋『モロッコ』、知りませんでした。機会あれば行ってみたいです。経営者はモロッコ人なんでしょうか?
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    もくもくさん、コメントカミングアウト、ありがとさまです。お待ちしておりました。 さて、長年住んでいたからか、到着したとたんなんかこう長い出張から帰ってきたような気分になりました。とても間に2年半あったように感じられなかったですね。それにしてももくもくさんは在港13年なんですね。すごい。日本には住めない身体になってるかもしんないですね(笑)
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    Junpeiさん、引っ越しは大丈夫でしたか? ひそかに香港にお邪魔しておりました。
    ただもう、やたらとスケジュールが決められてて自由な時間はあまりなかったです。しくしく。次回はこんなスケジュールではなく、落ち着いてみんなと会えるようがんばります・
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    ぺぺさん、「のら犬の寝姿」の定点観測をするためだけのバンコクツアーもたのしそう! ぼくもタニア通りの「有馬温泉」に行くためだけに通っていたもんです。 変わる楽しみもあれば、変わらない楽しみというのもちゃんとありますよね。 それはもしかしたら、「変わらない自分」を確認して安心するのかもしれませんね。
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    faithiaさん、ひとはなにかしら自分の魂やら感覚やら感性やらを解放させる場所が必要なんだと思います。 ぼくは「日本を出る」ことでそのスイッチを持ちますが、マイカーで高速道路を突っ走るというひともいれば、旅行で地元の料理を食べるというひともいます。 faithiaさんのスイッチはさてなんでしょう?

  • 生きることのリアリティを五感で感じると、人は詩人になるのですね。
    この日記、とっても好きです。
    じっくりと味あわせていただきました。
    ありがとう。

  • もぐさん、気に入っていただきありがとうございます。まさに書き散らかしている文の行間が何を言わんとするか、もぐさんならきっと感じ取っていただいたんでしょうね。

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    なおきん

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。