ピントのあった商品

買い換えるつもりはなかったiPhone4Sなのに、
ジョブズ氏の亡くなったニュースに化学反応を起こし、
即、ソフトバンクでネット予約をしてしまった自分に呆れる。
「今回は見送るし、次のバージョンではauで買う」
などと周囲には話していたのに。

訃報を聞き、ぼくと同じように予約をした人はきっといるはずだ。
そんな人達とはぜひ「新調してよかったね」と後で語り合いたい。
前のiPhoneをどうしたかについても。

ポッドキャストでも配信されているWWDCなどの様子を
ライブ録画したApple keynotesが大好きである。
配信が追加されるのがささやかな楽しみのひとつである。

もちろんジョブズ氏の基調講演がお目当てだ。シラーもいい。
「今日も来てくれてありがとう」「おはよう、みなさん!」
そう言いながらステージに現れ、にっこり笑うジョブズ氏。
もう二度と見れなくなったんだと思うとすごくせつない。

彼の発表する新製品にもワクワクさせられたが、
彼のプレゼンテーションそのものにぼくは興味がある。
自分も折りにつけ、スライドショーによるプレゼンをやるが
彼のプレゼンは、ほんとうに何度見ても勉強になる。

ただ心配だったのは見るたびに痩せていくその姿だった。
iPhoneの発表のころはすい臓がんの手術をしたあとで、
ぽっちゃり体型が、むしろ精悍になった感じすらした。
だが2009年9月、肝臓移植手術後はじめて姿を見せたジョブズ氏は
盛大な拍手で迎えられていたが、その痩せ方は尋常ではなかった。

一時は「あと数ヶ月の命」と宣告されたすい臓がんが、
手術で治るタイプのそれだと確認され延命したのが2004年。

おかげで人類はiPhoneを手に入れ、iPadに触れることができた。
音楽はダウンロードで購入することが当たり前になり、
個人でもアプリを作ればApp Storeで売れるようになった。

iPadiPhoneより、だいぶあとになって発売されたが、
実はiPhoneより先に開発されていたのだという。

「今これを出してもユーザーはどう使っていいかわからない」

ジョブズ氏はそう言い、iOSApp Storeの熟成を
待ってから世に送り出した。
iPadの副産物でもあるMacbook Air二代目も大ヒットした。

死を乗り越え、なお製品マイルストーン
しっかりとした文脈をもたせる戦略にあらためて感銘を覚える。
ひとつ買うと次も買いたくなるバインディングな製品づくりなど
ビジネスマンとして範にしたい点はほんとうに多い。

すい臓がんは、その後もジョブズ氏を悩まし続け
死因もこれによる呼吸停止であったといわれる。

マックなかりせば、ウインドウズもまたなかっただろうし
iPhoneなかりせば、アンドロイドもなかったと思う。
あったかもしれないが、そこにベンチマークすべき範がない。
利用者の心に響く製品にはなり得なかったのではないか。

とすればジョブズなかりし世界は今とずいぶん違っていただろう。
スマホ関連ビジネスは、大不況の最中に世界経済を牽引している。
ジョブズ氏は死してなお、世界に影響を与え続けているのだ。

氏のビジョンは「ピントのあった」製品を世に送り出すことだった

ピントをあわせるのは、思いのほかむつかしい。
多くはどこにピントを合わせていいのかすら、わからないからだ。

今夜、iOS5iCloudがリリースされる。
デジタルハブは、いよいよパソコンからクラウドへ進化する。
人それぞれ頭上にぽっかり雲を浮かべて歩く時代だ。


▲ 10月12日21時時点のiCloud画面、サービスインされれば全ての機能が使える

5 件のコメント

  • コメントを入れさせて頂くのは初めてとなります。いつも興味深く拝見しています。自分もなおきんさんと同じく、「5まで待ってauで…」なんて回りに言っておきながら、舌の根が乾かぬうちに職場近くのソフトバンクショップで予約してしまいました(苦笑)。「4S」の名に「For Steve」の想いを馳せて。

  • IPod touch を買って、操作感が気持ちよく、かつ便利な事に衝撃を受け、気付いたらMac、iPadまで買ってしまいました。
    全てに共通する操作感の良さ。デザインの良さ。簡便さ。今までのハイテク(死語?)製品のイメージを全て変えられてしまいました。
    こんな製品を世に出した経営者の偉大さを感じ、また彼の頭脳と供に消えた製品、アイデアはどの位あったのだろうと考えると、ワクワクさせてくれる惜しい人が亡くなったと、寂しいものを感じます。

    そして、楽しみにしていたiOS5。今度はどう驚かせてくれるのかワクワクしながら、これからのAppleも、今までののような製品を世に送り出す会社であり続けて欲しいと思います。

  • こんばんは。

    既にガジェットデバイスとして発想力の究極ともいえるのではないのか?

    iPhone。

    巷では「iPhone」と「iPhoneみたいなの」で溢れていますね。

    Appleの成長が楽しみな反面、SONYの近況には寂しい気持ちでいっぱいになります。

    かつてのSONYにAppleはビジネスモデルとして参考にしたのは話としては有名ですが現代において冒険をしなくなった企業が利益に走って保守的なスタイルで経営してゆくと結果、じわじわ失敗の道を歩んでゆくのはAppleには反面教師としてSONYに習ってほしいです。

    ウォークマン世代の僕としては、全く話題にならなかったSONYタブレットはある意味で衝撃でした。

    PSVITAも多分コケちゃうんだろうなぁ・・。

    ジョブズ亡き今後もAppleにはワクワクさせてくれる会社でいてほしいですね。

    失礼しました。

  • ワタシも4Sを予約しましたー。まだ入手できてません。アップルファンではありませんが、i pod nano 6th editionに次ぐアップル製品です!なんとなく使いこなせない予感がプンプンなんですが、面白いアプリとかを探して楽しんでみたいです。

  • BLANCAさん、一番ゲット、おめでとさまです!&初コメント、ありがとさまです!とても共感します。ぼくと同じように反応してしまいましたね。世界中のiPhone4ユーザーについても同様かもしれません。初日の予約が4が60万、4Sが100万という数字にも現れてます。すでにゲットされましたか?ぼくは発売日より4日遅れて18日に自宅に届く見込みです。
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    楽庵さん、
    なんだかアップルのハマリ具合、順番がぼくとそっくりですね。ぼくは会社支給のDocomoのXPERIAも持ち歩いていますが、Android端末をさわってみるとなおのことiPhoneのUIの素晴らしさを再認識します。新製品にワクワクする経験をここしばらくApple以外で味わったことがありません。偉大ですね。
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    じさん、
    「iPhoneみたいなの」はここにきてますます、本家とさが開いている気がします。ディスプレイもなぜ4インチでなく3.5インチだったのか?なぜボタンはひとつでなくちゃいけなかったのか、他社製品を使ってみるとあらためてそこのこだわりが理解できます。アップルのエコシステムにいたっては、もう底知れない可能性がありそうです。本音はソニーにやって欲しかった、ですが。
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    わんわんわんさん、
    使いこなせなくても、持っているだけでわくわくするのがiPhoneです。手元についたら、直感でどんどんいじってみてくださいね。壊れても初期化すれば元に戻るし、データはiOSがクラウド上でバックアップしてくれてるし。早く届くといいですね。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。