われらがノブちゃん

日本人が大好きな歴史的ヒーローのひとり、織田信長
われらがノブちゃん。親しみをこめて、ぼくはそう呼んでみたい。

ノブちゃんについては、
いろんな著名人によってほぼ書き尽くされている。
ぼくも小学校の頃から今日まで、
彼について書かれた本は片っ端から読んだ。
なにしろぼくにとっては、
ウルトラマンの次にヒーローだったから 。
仮面ライダーとどっこいどっこいで、
デビルマンより上だった。
ジョブズもすごいが、やはりノブちゃんにはかなわない。

数あるノブちゃんの功績のうち、特にぼくのお気に入りは
ひとつは「兵農分離」、もうひとつは「政教分離」だ。

戦国時代は年中、戦(いくさ)が行われていたような
印象があるが、実はそうでもない。
兵隊はそのほとんどが農民であったから、
例えば農繁期になれば戦をやめ、故郷で田植えか稲刈りをした。
農作業があるのは敵も味方もお互いさまである。
「腹が減っては戦はできぬ」というよりは
「糧がなくては戦は出来ぬ」だ。

相手を殲滅するまで戦うなど、めったになかった。

各武将には功績に応じてそれぞれ「石高」単位の領土があり、
その多寡で兵隊の数が決まっていた。
例えば1万石の領土ごとに500人の兵、というふうに。
戦が始まると、豪族が領地内の村から百姓を集め、
足軽兵として戦わせていたのだ。

ノブちゃんは違った。
兵を銭で直接やとった。
中には流民や乞食までいた。闇商人もいた。
札付きのワルもいれば、サルもいた(後の豊臣秀吉)。
当時、領地に属していない輩など、ろくでなしばかりである。
そんなので統率が取れるわけがない。士気も低い。
だからノブちゃんの将兵はたいてい弱かった。
敵の3倍の兵力を持ってしても負けちゃうくらいだ。
桶狭間のような奇襲攻撃はあれが最初で最後だった。

だけどノブちゃんの兵たちは田植えも稲刈りも必要ない。
だからいつでも、いつまでも使えた。
農繁期に戦いを仕掛け、敵の砦をひとつかふたつ奪い、
敵が仕方なく応戦すれば逃げた。
一旦引いて、また攻める。
敵はしつこさに辟易して降参する。
これで「勝利なり」だ。ノブちゃん、すごい。
愚兵で相手を根負けさせちゃうのだ。

「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」などと、
短気だったというイメージがあるノブちゃん。
でも実はとっても辛抱強かったのだ。

とにかくこれが「兵農分離」。兵隊は銭で雇うもの。
兵をサラリーマン化したのはノブちゃんが最初だ。

では給料をどう調達したか?
世に言う「楽市楽座」がその需要に応えた。
ノブちゃんは関所を取っ払い、商人座をつぶし、
商人たちが取引しやすくした。今で言うところの規制緩和だ。
関所を運営する寺社や豪族は税の取りっぱぐれである。
通行の上前もはねられなければ、シャバ代もとれない。
当然反発は多かった。既得権益者は悔しがった。

だけど、ひとは集まり市場は活性化する。
全国から商品やお客が集まり、
めずらしいものもどんどん取引された。
同時に尾張の商品も高く売れ、
武器や茶器などの物資も手に入りやすい。
そこでころを見計らってシャバ代(場銭)をとる。
商人たちはこれだけ客のいるシャバを捨てられず快く払う。
銭が集まると兵を雇い、それによって領地を広げ、
そこで商売を活性化し、その銭でまた兵を雇う。
好循環である。

鉄砲隊で有名な長篠の戦い
ここでノブちゃんは実に3000丁もの鉄砲を用意した。
それなりの資金も要したであろうが「楽市楽座」の賜である。
しかもまだ16世紀。世界広しといえども、
ひとつの戦場に3000も鉄砲が使われた戦争は初めてであった。
鉄砲が種子島に伝わってまだ30年。
ノブちゃんもすごいが、舶来品を見よう見まねで国産化させ、
短期間でここまで量産化した鉄砲鍛冶もすごい。


▲ 武田軍団を破った長篠の戦いを描いた絵巻

近代軍隊に備わる専門兵科の登場。
これも「兵農分離」の功績のひとつである。
サラリーマン兵だからこそ可能であった。

戦場で多くの命を失った時代。
ひとは拠り所を求めて宗教に寄る。

当時坊主は世俗的で、市場や関所で利益をあげ武装までしていた。
覇を競って戦闘にも参加した。
ほおっておけば、聖徳太子の功績虚しく、
宗教戦争だって起きたかもしれない。
だがノブちゃんはきっぱりと
「宗教は個人の心の中に留めよ」と主張する。
民の信仰は禁じない。
だが行政に持ち込むなと諌めたのだ。

これが「政教分離」だ。

宗教を政治に持ち込まない。持ち込ませない。
これが国内に引き続き宗教戦争を起こさせず、
外に対してはキリスト教国家による侵略を防いだ。
共に持ち込まれた技術や工芸品は持ち込ませたが、
宗教を政治に持ち込ませなかった。
列強のアジア侵略は、まず宣教師がやってきて、
キリスト教の普及に始まったことを鑑みれば、
ノブちゃんはザビエルなど南蛮人の意図を
ちゃんと見抜いていたようだ。

ノブちゃんなかりせば、日本はいまとは違っていたかもしれない。
同時に、あと10年長生きしていても、
やっぱりその後の日本はだいぶ変わっていたはずだ。

それほどの影響力があった人物だったのだ。ノブちゃん。


ぼくにとってのヒーローは、ある状況において「かの人物だったらこの状況をどう切り抜けるだろうか?」などと、仮説を考えるのにとっても役に立ってます。たとえば「ノブちゃんなら、TPPに賛成するかな?反対するかな?」という問に対し、曰く「TPPって自由貿易っぽく宣伝されるけど、経済ブロックにすぎず、リージョンごとの保護貿易を促進することになるから、その意味で反対!」とかね。さすがにこの歳だから「もしウルトラマンだったら・・」とは、考えなくなりました。単に「少年の心」を失ってしまっただけなのかもしんないけど。




5 件のコメント

  • 歴史は 「必然の結果」 だと思います。ですから、ノブちゃんはノブちゃんの役を演じた(舞った)のだと考えます。それだからこそ 「輝いた」 のでしょう。彼は巨大な恒星だったはず。それも隣の星の光が弱まる位に。私もノブちゃん大好きです。この辺の話は一緒に仕事してた頃に話した記憶が無いのですが、あまりに長い時間一緒だったので 「取っ手の付いていない引き出し」 がたくさんあって、思い出せないだけかもしれませんね。

  • 歴史には疎いsiusiumaoです。昔、元カレに歴史の魅力を聞いたら「『if』を考える面白さ」と答えられました。でも、それってその人となりをわかってるから考えられるんですよね!そこまで感銘を受けた人ってアタシにはいないかもしれない。。。とチョット切なくなりました(笑)
    寒くなりましたね。今年の風邪は長引くようなのでお気をつけください☆

  • 超有名人来ましたね。書店の歴史もののコーナーに行くと必ず見る2文字「信長」。何で日本人は信長が好きなのか、とこれもよく見る表題ですが、私は日本人はヒーローが欲しいのではないかと思っています。それも第二次世界大戦に敗けた影響で。
    国内も、国外も、兵隊も、一般人も、できる限りの努力、協力をした戦争。明治以降のそれまでの対外戦争のように勝利していれば、功績著しい人たちは勲章や褒賞によって、一般の人々はそんな人たちを出した自分の国や地域を誇らしく思い、慰められたでしょうが、事実は敗戦。
    「捕虜にたまにはご馳走食わせてやろう」ときんぴらごぼうを振舞った者が処罰されるような状態で、国の指導者たちは戦犯にされたり、GHQがメディアを使って徹底的に貶めたおかげで、一般市民は完全に「指導者不信」を植え付けられる。それが現在まで続いてる、ように見える。
    英雄も全能ではない。その人について行った多くの人の努力もまた、その人を「英雄」としている大きな要因のはず。なのに今の日本ときたら、メディアは批判やあげ足取りに明け暮れ、一般国民は政治に関心がない。絶対にヒーローなんか産まれっこない。

    そんな状況だから、現在と(ほぼ)しがらみがなく、おまけに戦国時代を実力でのし上がったという血湧き肉躍るようなストーリーを持つ、信長に惹かれるのではないかー。少し寂しい話です。

    TPP、やると決めたからには少しでも有利な条件を引き出せるよう、頑張って欲しいところですが、はてさてどうなる事やら 。

  • 昔の同僚さん、一番ゲット、おめでとさまです!
    目の前に振りかかるさまざまな問題に翻弄されていたから、歴史問題をテーマに議論するヒマなどなかったかもですね。いや、南京大虐殺については議論した記憶があるような・・。ともかく、そんなふうに「取っ手のない引き出し」を不器用に抱えつつ、これからも抱え続けるんでしょうね。
    ——————————-
    siusiumaoさん、
    概して男性のほうが歴史が好きな人が多いかもしんないです。「歴史シミュレーションゲーム」なんてやるのは、たいてい男ですしね。ぼくも "ifモノ" は大好物。未来予測にしたって「過去のif」が材料になることが多いですから。さて、siusiumaoさんも風邪にご注意をね!
    ——————————-
    楽庵さん、
    いつの時代もヒーローが求められますが、変動要素が多すぎて予測が難しいいまではなおのことそんな感じがします。とくに既得権益をぶっ壊して、新しい価値を醸成した信長のビジョンとリーダーシップは、いまの日本人にとっては垂唾モノ。だのに嘆きたくなる今の惨状、がっかりですね。既得権益をぶっ壊すという意味ではTPP参加もそうですが、結局「外圧に頼る」という黄金パターンでは、寂しすぎますね。

  • 大物は、思考回路からして違うんですね!

    器の大きさもそこからくるんだなぁ、スゴイ!と思いました。

  • 昔の同僚 にコメントする コメントをキャンセル

    メールアドレスが公開されることはありません。

    日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

    ABOUTこの記事をかいた人

    なおきん

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。