なわばり広告

ちびきちを散歩に連れていくと、決まった電柱におしっこをする。誰が教えたわけでもないのに、クンクンと匂いを嗅ぎ、それから力士のように片足を上げて用をたす。別の犬のおしっこを自分のおしっこの匂いで消し、上書きするのだ。

「おいらのなわばりだよ」と。

そんな犬のDNAに呆れるし感心するが、領土問題を思えば人間も同じ。おしっこをひっかけあうようなことをする。竹島尖閣魚釣島択捉島国後島・・・。だからぼくは密かに散歩コースの電柱のひとつひとつに島の名前をつけてみた。ちなみに「尖閣電柱」はいろんな犬がおしっこをするから、致命的なシミで黒っぽくなっている。ペットボトルの放水では、もはや落ちない。


海上保安庁と領海に侵入してきた台湾の巡視船と迎撃する海上保安庁巡視船との放水合戦。40隻もの漁船と数隻の巡視船を相手に、日本の巡視船はみごとな操舵で接触することなく放水にて応戦。政治は弱いが防人たちは頼りになる。

縄張り争いは新聞紙面でも繰り広げられる。
9月28日の「ワシントン・ポスト」と「ニューヨーク・タイムズ」の二紙に掲載された全面広告『Diaoyu Islands belong to China (魚釣島は中国に帰属する)』は衝撃的だった。中国政府の勝手な言い分が、しかも中国の有力紙(チャイナデイリー、チャイナウオッチ、中国日報)が発信という体裁。だれがどうみても広告には見えない。まるでスクープ記事のようである。そう見えるよう巧妙に画面レイアウトされた努力がみてとれる。


ニューヨーク・タイムズワシントン・ポストに載った2ページ見開き広告

両紙の読者をして「なんだ尖閣諸島はもともと日本のものじゃなく、中国から盗んだんじゃないか」と思わせるに十分な内容である。

最初この広告を見て「有力紙が2つそろってよくもまあこんな広告を引き受けたもんだ」と思った。よっぽど高い広告費をもらったに違いないと。無料のネットニュースが蔓延し、人はわざわざ購読料を払って新聞を買わなくなった。広告主も費用対効果が確かめられない新聞への出稿をためらう。そのため「ワシントン・ポスト」も「ニューヨーク・タイムズ」も往年の輝きはない。職員を解雇し、延命策をとる。あるべきジャーナリズムを捨ててでも、拝金主義に走らざるをえないのかもしれない。貧すれば鈍するのだ。おまけに「それいい手かも」とこんどは韓国人が真似して、従軍慰安婦広告をタイムズスクエアでぶちまけた。見ているこっちが恥ずかしくなるが、まともに受けるアメリカ人だっていたかもしれない。

在ワシントンジャーナリストの古森義久氏によれば、中国共産党の英字広報紙チャイナデイリーなど2紙は、米国のW紙N紙を含む4紙に対し、半年間だけで5.6億円もの費用が支払われているという。なるほど。貧した新聞社にとって、中国政府はありがたいスポンサーなのだ。

だがこのことは相当、深刻である。
普通の商品広告だって「誤解を与えないよう」注意を払い、場合によっては掲載を断るものだ。だのに、同盟国日本の世論を敵に回しても、中国政府側のデマを代弁してみせる伝統ある有力紙2つ。金を積まれればなんでもアリか。これはもう、米ジャーナリズムは金次第ということを証明してしまった事件だ。

そう、これは事件なのだ。
そして2012年9月28日は米ジャーナリズム没落の日として、大きな禍根を残すに違いない。

なんてことを言ってはみたものの、こんなことは戦前から普通にあった。「日本人が中国でひどいことをしている」と、ありもしない虐殺や信ぴょう性の低い略奪行為などのやらせ記事は1920年代から米紙に掲載され、満州事変以降はさらに盛んになった。反日プロパガンダ映画『バトル・オブ・チャイナ』なども上映された。蒋介石総統夫人、宋美齢の米国の反日ロビー活動もたいへんなものであった。こうしてなにも知らないアメリカ一般市民は中国に同情的で、日本に敵愾心をもつようになった。米国は中国に軍事物資を与え、パイロット付きで戦闘機を与えた。日中戦争で日本軍が戦っていた中国軍はアメリカとドイツ(!)の兵器で武装されていたのだ。やがて日米開戦。1941年の日本のハワイ攻撃から「くたばれジャップ」一辺倒へ世論が傾いたのも、長年の中国政府のプロパガンダ記事が奏功したともいえる。


蒋介石の妻、宋美齢はLife誌の表紙を飾るほど米国で人気があった

「百ぺんつけば嘘も真実になる」

とはナチスゲッベルスの言葉を、毛沢東が引用したセリフだ。中国の政治家は嘘ばかりつくが、たまにホントのことを言う。

米国ジャーナリズムも地に落ちたが、日本は人のことを言えない。NHK局内には中国のテレビ局CCTV中国中央電視台)が居候している。ただで施設を使わせているほか、中国人職員の住むところまで面倒みている。まるで客人扱いだ。いったいなんのためにこんなことをしているんだろう。CCTVNHKがやっていることを本国に伝え、中国にとって都合の悪いことをさせないよう見張っているのかもしれない。

中国は今も昔もメディアを上手に使って政治目的を果たしている。今回は金を使って米国メディアをけしかけるが、日本に対しては逆に金をもらいながらやるところがスゴイ。相手がスゴイのか日本のマスコミが情けないのか、ちょっと判断に迷うところだけど。

これらが報道されないのも居候たちの成果かな?

▲ 怪しい左翼団体にNOを突きつける沖縄県


オスプレイを歓迎する団体もある

ともかくNHKは国民から徴収した受信料を、
そっちに使うなら、返したほうがいい。
受信料も、それから居候たちも。

中国の活動成果が早くも・・

民主党鷲尾英一郎農水政務官は9日、東京都内であった自身の政治資金パーティーのあいさつで、尖閣諸島の国有化について「諸島は日本の領土。誰が所有しようとも関係ないはずだ。中国政府が所有したっていい。語弊があるが、日本の登記簿に『中国政府』と書いてもらったらいいだけの話だ」と述べた。鷲尾氏は「日本の領土として我々は断固たる決意の下、守り抜くことが大事だ」とも説明。海上保安庁海上警察権の強化などを訴えるなかでの発言だが、政権の尖閣国有化政策と異なるとして野党の批判を招く可能性がある。”【朝日新聞デジタル版 10月9日22時】

6 件のコメント

  • うーん。宣伝戦に負けている感じがヒシヒシと。戦争中の話を聞いても、日本は占領地の住民に対してすらプロパガンダがとても下手だという印象を受けますが、これだけメディアが多様になっても、本質は変わらないということか、現在も下手なんですね…。
    かと言って私もいきなり「自己PRをせよ」等と言われたら困惑しそう。国民性の問題もあるんでしょうかね。

  • すげえ・・・面白いです。
    楽しいです。こんなふうに誰かの執筆が楽しみになるなんて初めてです。ありがとうございます。

  • 今や中国の影響力はここまで、というか、国力の落ちてしまったアメリカは何か寂しいものがありますね……。魚釣島広告、ほんとうにショッキングですね。中国はメディアも買ってしまったのかと思ってしまいます。

    それにしても、巡視船どうしの放水合戦は思いもよりませんでした。弾丸でなくてよかったです。犬のおしっこ縄張り競争と二重写しになってしまいました(笑) ちびきちとのお散歩でこういう比喩を思いついてしまうなおきんさんは面白い人ですね(^_^)

    日本だけじゃなく、どこの国の領海近辺でもこんな光景が繰り返されてるんでしょうか?

  • 基本的に世界諸国は日本の基本精神を研究し、理解したうえで勝ち戦に持っていっている気がします。
    戦前ほどではなくても「恥」の文化が日本にはあり、「○○は日本の品位を落とすからしない」「冷静に対応することが、大人の対応である」などなど、よくいえば我慢強いとか武士道と言うか紳士的という態度なのですが、見方を変えると思っても口にしない大人しい人達なのでしょう。
    だからこそ日本の「常識」から外れたことをされたりして慌ててしまう、「まさかそんなことはしないだろう」という考えから足を取られてしまうなんてことがあるのでしょうね。
    やはり東南アジア諸国やオセアニア諸国との連携を強めていくしかないでしょう。
    今まで大人しかった分、領有権を主張し出すと、普通のこととはいえ、東アジアは「日本が戦前に戻った」「日本が右寄りに」なんて言われちゃうのも変ですよね。
    民主党はもともと中国寄りの政党と思っていたので、今更驚きもしませんが、オスプレイ憎しの報道には呆れている部分もあるので、最近しっかりとニュースを聞いていませんでした。日本のマスメディア・・・しっかりと中立の立場であり、日本の国益を重視していただきたいものです。時の政府を批判していればいいというものではないのでしょうから・・・。

  • 米国の新聞にはびっくりです。何かのネタのようです。
    中国そこまでするんですね。むなしくならないのでしょうか。

    わんちゃんの上書きのようには笑えませんよね。そういえば、今朝わんちゃんの散歩に、ペットボトルではなく持ち手のあるピッチャーを持っておられ方を見掛けたのが、なにか微笑ましかった♪

  • 楽庵さん、一番ゲットおめでとさまです!
    ぼくは10年以上前に、何年もかけて「南京大虐殺」の検証を行いました。このとき情報戦の恐ろしさと素晴らしさを学びました。しかもそれは歴史ではなく、今なお現役だということも。ぼくも自己紹介が苦手です。だからブログにしちゃうのかもしれませんね。
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    myLAさん、初コメントありがとさまです。
    恐縮です。その言葉を励みにして、これからもがんばりますね。ただたまにヘンな記事もはさむと思うのでどうかご了承を。
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    ぱりぱりさん、
    民主主義の国、ジャーナリズムの国と世界から模倣とされてるはずの米国。ゆえに今回の広告には失望しました。「あらためて」ですが。さて、各国の領海・領地国境近辺ではいろんな小競り合いがあります。砲を撃ちあったり、誘拐しあったり。中国は相手がベトナムやフィリピンになると、経済で恫喝したり、相手がひるめば実際に軍事行動を起こしています。日本に対しては、宣伝戦は前哨戦と見て間違いないでしょうね。兵を送りこむ前の、空爆みたいなものです。
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    mu_ne_2さん、
    先日の海上自衛隊の観覧式、ごらんになりましたか?すごかったですね。米軍、オーストラリア軍、シンガポール軍らと共同だったことと、米第七艦隊長官が自衛隊の護衛艦に乗り「中将旗」を掲げ、野田首相に敬礼してみせるという様、明らかに中国へのけん制。「もし攻撃するなら、相手にするのは日本だけではない、環太平洋国家群だ」という姿勢を見せました。もはや「尖閣諸島が中国のものかもしれない」という迷いなど一顧だにない、といったものを感じますね。
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    ラム子さん、
    つくづく「弱い犬ほどよく吠える」を見た感じがしますね。中国然り、韓国然り。でもそれに愚弄される人達もまたいるわけで、少なくともぼくたちはしっかりリテラシーを持つということでしょうか。こないだちびきちは竹島電柱そばでウンチしやがりました。あいつも思うところがあるようです。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。