テーブルの上のノート

高校を卒業すると同時に実家を離れ、大学のある街でひとり暮らしを始めた時おなじくして、実家ではさっそく家のリフォームを始めた。バカ息子が出ていって、ちょっと気分転換でもしたかったのかもしれない。かといってこれはないだろう。ぼくの部屋は断りなくオトンの書斎になっていた。

ある日、実家に帰省中、居間のテーブルの上に置かれた一冊のノートに目が留まる。見覚えのある懐かしいノート。自分が15のころから、感じ、思うことを書き留めていたものだ。詩ありエッセイありイラストあり貼りつけた写真あり。まてよ、と思う。なぜこれが?

仕事から帰ってきたオトンにノートのわけを聞く。
「部屋のな、じゅうたんの下に、あったんじゃ。捨てちゃいけんと思うての」思春期まっただなかに無防備に書かれたノートである。他人に、ましてや親に見られたくないものの集大成である。「オトンに読まれた」と察した瞬間、まさに顔から火がふき出した。

パラパラとノートをめくる。当時はマジメでもいま読めば、どれもこれも恥ずかしいことばかり書いてある。直ちに捨てたくなったが、いまさら処分してももう遅い。バカなぼく。いまもバカだが。ベッドの下に隠したエロ本が見つかるより10倍、恥ずかしい。ふと、覚えのない赤ペン二重丸がページに書き込まれているのを発見する。オトンのしわざだと直感した。ていねいにアンダーラインまで引いてある。それは、一文の短い詩。

 恋をして 痛くなければ 恋じゃない

なんだこれ?
生涯、忘れられない恥ずかしい詩。なのになんだこの二重丸は。アンダーラインは。「気に入った」ということなのか?いまどきなら「いいね」なのか? 自分の身にも覚えがあるのかオトン?なあ答えてくれよ。いや、答えなくていいよ。ああ、記憶から消したい。

いまでも恥ずかしい話、あなたにもあるでしょう?
ぼくは、これがそうです。よく考えたら、あのノートはまさにイラ写の先駆。ということは、もっと恥ずかしいことをブログでやっているのだと、ようやくいま、気づいた。

恥ずかしい!
その詩をいまだ覚えている自分にも!

10 件のコメント

  • 微笑ましくて、思わず「ふふふ」と声に出してしまいました。

    みつかるとこまでは。
    そのあとすぐに衝撃を受けました。二重丸の内容に。

    なおきんさん、素敵だと思います、私。
    その感性も、こんなに素敵なイラ写を恥じらってしまわれる精神も。

  • ;`;:゛;`(;゜;ж;゜; )ブッ 
    エロ本より恥ずかしい!ですか?w
    そうですか。
    私も顔から火が噴くより遥か
    ビックバン宜しくな恥ずかしい話がありますが('(ェ)';)
    呆けて忘れたことにしたいと思っています。
    何でもかんでも記しておこうとしていたけれど、
    人間せっかく
    忘却という神様からのステキな贈り物を賜っているのに
    忘れずに執念深く覚えているのはイカン!とねw
    なおきんさんのお誕生日まで
    コメント書くのはやめとこーって思っていたのに。
    つぃね。
    へへへ。 ボケでそれも忘れていたって事で。。。

  • こんばんは。
    なおきんさんの思春期・・・
    とっても早熟で聡明な少年だったのでしょうね。
    どんな女性に恋をしていたのかなぁ?
    お父さま、とってもチャーミングな方ですね^^

    確かに、エロ本はそれがどんなに恥ずかしい内容だろうと、
    「誰かが作ったもの」ですもの。
    自分の頭と心の中を晒しちゃうほうが、
    ずぅっと恥ずかしいと、わたしも思います

  • 私も中学・高校と毎日日記を書いていたのですが、まだ捨てていません。
    もしこれを家族に見られたら、ヘソ噛んで死にたいです(笑)
    あ、死ぬ前に処分しないと死んでも死に切れないかも(^^;

  • はてなさん、一番ゲットおめでとさまです!
    たとえば今回書いたような内容を、知り合いや仕事仲間との会話の中には絶対話さないと思います。でもなぜかイラ写には書ける。そして公開する。冷静に考えたら相当恥ずかしい。なぜできるのかな?とすこし考え思い当たりました。きっと「なおきん」というキャラをたてることによって、第三者的な立場で書いているからなんだと。ぼくであって、ぼくでないキャラというわけです。
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    **さん、
    >「忘却という神様からのステキな贈り物を賜っているのに
    忘れずに執念深く覚えているのはイカン!とね」< まったくです。人間は忘れることができるから、堂々と生きて行けるんだなあと思います。それにしてもあのノート、捨てたつもりが無意識に隠していた、だなんて。
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    ユーリさん、
    すみません、買いかぶりです。早熟だったかもしれないけど、聡明には程遠かったです。失恋の数だけ恋をしました。学習効果はなかったし今もないです。「誰かが作ったものより、自分の頭と心のなかを晒しちゃうほうが・・」というくだり、我が意を得たりでした。おっしゃるとおりですね。
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    杏仁さん、
    ああ、ぼくはそれを実際に見られてしまいました。しくしく。へそ噛んで死にたいです。いや、いまとなってはオトンもボケて忘れてしまっているかもしれません。時がすべてを解決するのですね。
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    直美、久しぶり!
    5月に同窓会があったことすらしらなかった。これまでいちども同窓会なるものに出たことがない事にいま、気づいた。次あったら知らせて。透明人間になって参加するから。

  • うふっ。
    皆さん意外と多いのね、秘密のノート所持者。
    私も10代から20代の頃に書き溜めたノートが十数冊。天袋に眠ってます。これを残しては死んでも死にきれない、って奴。だから以前はアタッシュケースに入れて鍵して、親友に「棺に入れてね」と頼んでましたが、アタッシュケースが黴ちゃって仕方なく今は裸でヒモでくくってますが。う~~~ん、捨てられない、どうしよう。。

    • ダリアさん、こんにちは!
      ここはひとつ、秘密の手帳を埋葬してあげてはいかがでしょうか?思い出は記憶に留め、前を向く。過去は過去、いいこともあったしいやなこともあった。過去を受け入れられない人ほど過去に固執すると言います。向かうは未来の一本道ですね。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。