解散総選挙に大義はあった?

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小学生になりすましてでも「総選挙への疑義」を訴える人がいるように、今回の衆議院選挙についてはいつもよりなんだかものものしい。選挙には700億円かかるがこれは無駄遣いじゃないのか?みたいな意見もある。「なにもかも安倍さんが悪い」的な意見をもつ層からはとにかく「大義がない」と否定的だ。

そもそも解散に大義はあるか?

たかが消費増税延期ぐらいで・・と思っている人はぼくも含め意外と多い。だから安倍政権2年間の成績について問う「アベノミクス解散」であると新聞やマスコミでは報道する。そうかもしれない。だが、首相はそれで解散しようとは思わないだろう。どう大義名分を奏でようと、やっぱりこの解散は「消費税増税解散」である。じゃあなぜ解散までしなくちゃならなかったか。これについて、つらつらと考えてみた。

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▲ 問題のホームページ

どうひいきめにみても経済的には失敗だった4月の消費増税は、よくなりかけていた景況感を完膚なきまでにふっ飛ばした。6月までは反動はあるが7月からはまたよくなると、したり顔で言っていた財務省お抱え経済評論家たちはあわてて口を濁した。それでさらに予定通り10%まで上げる、なんてことはどんなに経済音痴でも納得しないだろう。GDPがマイナスなのだ。税率を上げても税収が下がるのなら増税の大義はない。税収アップはなにより経済成長させGDPを増やすのが先決である。ふつう売上利益が足らないからといって商品の値段をつり上げたりはしない。逆に下げるなど価格流動性をもってお客さんを増やす。利益アップはそこから得るのだ。

消費増税法案が可決したとき、条件が整わなければ増税しないことを盛り込んだ「施行の停止」というのが、附則第18条にある。

第18条 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

要は、経済状況しだいでは消費税増税を停止できるというわけだ。だったら安倍さんが決め、行政でやればいいじゃないかと思っていた。だがそれは甘く、実際には国会で消費増税停止法案を可決しなければ措置できないのだった。これは4月の8%への増税のときもそうで、やれば絶対不景気になるのがわかっていただけにほんとうに歯噛みする思いだった。

ならふつうに消費増税停止法案の提出して国会で法案を通せばいいじゃないかと思うかもしれない。だがそんなことは無理だ。10月までに判断するということは、その数カ月前に提出が必要だがたとえば8月にそんな判断はできない。指標がまだ出ていないし、ましてやそのころ経済学者はこぞって楽観的な予想ばかりしていた。財務省もうまいことやったものである。ぜったい通せない停止法案を見越して、末期状態の民主党野田政権をけしかけ、3党をして消費増税法案を可決させてみせたのだから。

増税するしかないゴリゴリの法案。だがいま追加で増税なんかしたら日本経済はふっとぶ。デフレ脱却は絵に描いた餅に終わり、せっかくの金融緩和も円安も無駄に終わる。増税停止法案が国会で可決できないのなら、これを国民に直接是非を問うしかないではないか。それで解散、総選挙である。消費増税で国民がどれほど生活に困っているか。民意を聞こうじゃないか、というわけである。

これは財務省がもっともやってほしくなかった方法である。それで新聞マスコミを使って大ネガティブキャンペーンをおこなった。もちろん直接手を下さない。いつもの「自主規制したまえ」である。議員先生あたりには「増税したぶんで予算をつけるから」と約束しているはずだから、解散なんてしたらふいになることをほのめかせばいい。いずれも国民にはなんの関係もないことである。社会保障とバーターとなっているが、そもそも消費税こそは社会保障ともっとも相性の悪い財源である。

ともあれ賽は投げられた。

はじめこそ解散総選挙なんかしたら自民党公明党議席はずいぶん減るぞと脅していたが、いまは逆に今よりもっと与党議席は増えると予測が改められた。そりゃそうである。野党はどれもアベノミクスを批判するだけして、ろくな代案がないのだから。これにはもう、ほんとうにがっかりであるが。

解散前と今回予測の比較:比例区小選挙区

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Yahoo!JAPAN ビッグデータレポートより】

アベノミクスのいう「デフレ脱却」を進めれば、その先はインフレ社会である。物価が上がり、相対的に貨幣価値が下がる社会である。貯めてるだけではお金は目減りし、賃上げがなければ生活はどんどん苦しくなる。デフレの頃は社会的に守られた安定的に給料をもらえている人や、お金を貯めこんだ人たちが有利であった。だから、不景気でもデフレがいいと思っている人は実は意外といる。収入はないが金融資産のある高齢者などだ。アベノミクスは痛し痒しである。インフレ社会でチャンスが有るのはこれから稼ぐチャンスのある若い人たちだろうと思う。加えて投資に積極的な人たちである。変わることを恐れる人に厳しく、変わることの出来る人にチャンスをもたらす社会だ。だからおのずと労働流動性が高まる。いいことだ。だけどそれが高齢化する日本にふさわしいのかどうかはわからない。いずれにせよ労働意欲があり、健康な高齢者が増えるのが必然になる。

そんなぼくはといえば選挙が楽しみである。占拠した場所を立ち退かされる香港の学生たちに想いを馳せれば、なんとしあわせなことだろう。民主主義なればこそである。普通選挙に参加できるありがたみがしみじみと。

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4 件のコメント

  • ご無沙汰です。
    野党の反対意見は昔からよく聞いていましたが、対案を聞いたことはありませんでした。あるいは、非現実的な対案しかと言い換えてもいいかもしれません。
    集団的自衛権を反対している党は、無償でアメリカが保護してくれると思っているのでしょうか?対話も大切だと思いますが、対話だけではサンゴ密漁が止まりませんでした。この現実をどう考えているか聞きたいのですが、誰も語ろうとしません。
    国民が何を欲しているか、理解しているのかはなはだ疑問です。
    財務省の暗躍は噂程度しか知りませんでしたが、日本に必要だとの信念で動いているのでしょうか?そのあたりがわからないのですが・・
    つらつらと、とりとめのないことを書いてしまいましたが、わからないことが多すぎる世の中と感じる今日この頃です。

  •  前回のコメント、そういえばお久しぶりでしたね。ちょこちょこ覗いていたので忘れてました。
     それにしても今回の解散は不思議でした。確か首相が「解散しない」と言って外遊に出たらマスコミ?が騒ぎ始め・・・?帰ってきて「解散する」と言って安倍さんがキレてるとか何とか?
     まあ、今のところ自民党の優勢は確保できそうな感じで何よりです。懸念は、デマで扇動して福島に打撃を与え続ける政党が議席を増やさないか。等々。
     短所が目立つ気もする民主主義。民主党政権になったのも、終わらせたのも選挙。投票が出来るという事は、確かに幸せな事かもしれませんね。

  • おととさん、一番ゲットおめでとさまです!予想通り選挙結果は与党圧勝でしたね。安倍政権が長期化することが明らかになれば、財務省は「面従腹背」とはいえ、態度をいくぶん改め政策に同調するのではと思います。それにしても民主党のふがいなさ。かつて政権を取っていたとは思えないほど。

  • 楽庵さん、
    衆議院解散の目的は「消費税増税延期のため」の一言に尽きると思います。それまで増税賛成だった自民党や民主党のそれぞれの議員は、「増税賛成では選挙で落とされる」とばかり、ほぼ全員、延期に賛成へと態度を変えましたからね。だから争点が無くなったということにもなりました。これにあせった財務省。新聞各社にネガティブキャンペーンを誘導するなどして抵抗。あげく安倍長期政権の確立。選挙での真の敗者は野党というより財務省、というのがぼくの持論です。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。