トランプ候補を支持するアメリカ人をバカというほうが、ほんとうはバカなのかもしれない話

トランプ候補を疑うひとは、言わされているだけ

日本の政権がひとまず落ち着き、次に気になるのがアメリカ大統領選挙である。ご存知、ヒラリー・クリントン候補とドナルド・トランプ候補の一騎打ち。民主党が政権維持するか、共和党が奪還するか、なかなか見ものである。

トランプが大統領になったら世界はひどいことになる。日本にとってもいいことがない。という論調で、どちらかといえばヒラリー氏を応援する向きがが世論にある。でも実際のところ、どうなんだろう? 確かに過激発言ばかりが繰り返し報道されれば、こいつやばいんじゃないかという気になってくる。


少し別の側面から見てみる。政治とカネについて。
アメリカ大統領選挙は意外とお金がかかる。前回のオバマさんのときは総額60億ドル(6000億円)かかったといわれる。少なく見積もって、ひとりの候補者に必要な選挙資金はなんと数百億円もする。もちろんそんなお金、自己資金では賄えないから、とうぜん資金援助が必要だ。伝統的にアメリカは、共和党が企業など富裕層から、民主党は貧しい労働者や移民から献金を集めてきた。これこそが、それぞれの支持基盤ということになる。見落としがちなのは、実はどちらの大統領候補もウォール街からたくさんの献金を受けてきたということである。

「金を出せば、口も出す」
というのは古今東西、鉄板の法則である。その結果、両党どちらが選ばれようと大統領はウォール街(FRB金融資本家)に頭が上がらない構図になっている。これは現職のオバマ大統領しかり。たとえば日本の国民皆保険制度を模範とした「オバマケア」は、はじめこそ鳴り物入りで掲げられたものの、民間保険会社(これも金融資本家ですね)のすさまじい反対を受け、けっきょくは民間保険会社に加入する制度にすり替えられてしまった。今じゃ「保険金が少なすぎるから」とか入金額をどーんと引き上げられ、大部分の低所得者層は掛け金を払えず、退会するはめになっている。これで国民皆保険の大義は失われ、オバマケアは大失敗に終わりそうである。

いかに素晴らしい政策も、だれが政治献金を出したか? によって、うまくいったりいかなかったりする。これがアメリカの事情である。日本もそうなのかもしれないが。

ところがトランプ氏は自己資金が十分あるので、政治献金を必要としない。よって、ウォール街の支配を受けにくいという特徴がある。トランプ氏を支持しているのはレッドネックと呼ばれる貧しい白人労働者階級の人々だが、「なぜトランプのような金持ち候補を 貧乏な人たちは支持するのか?」という疑問は、これで晴れる。ウォール街の連中にカネを出させなければ、口も出させないに違いないという期待が生まれるのである。

トランプ氏が言っているのはこういうことだ。

オレは不動産王でカネはある。選挙資金は自分が出す。ウォール街からの献金は受けない。アメリカを裏から牛耳っていた奴らの、言いなりにはならない。 ドナルド・トランプ

レッドネック(首の後が日焼けしていることからそういわれる)の人たちからすれば、金持ち優遇策からふつうの民衆を優遇してくれる策に変換し、自分たちの職を奪うヒスパニック系を排除し、よけいな軍事費をかけないよう(同盟国に米軍サポートを必要とさせない)にしてくれそうなトランプ氏は救世主のように見えるのだ。

いっぽうヒラリー・クリントンは、従来通りの政治献金を受ける候補者のひとりにすぎない。それでトランプ氏は「既得権益の操り人形」と、彼女を呼ぶ。とんだ見当違いではなさそうだ。

じゃあ、いったいトランプ候補が大統領になって都合がわるいのは、どこのドイツ人だ? ということになる。そう、既得権益者であるウォール街の人たちである。「これまで100年続いてきた金持ち優遇策を、アイツが大統領になれば本気で止めかねん」そう危惧しても不思議ではない。

それであちこちネガティブキャンペーンを張る。日本政府に対してもだ。「トランプが大統領になれば世界は終わるぞ」という情報を全世界に発信する。まさにポジショントークである。

アメリカ人は長く大統領選の出来レースのようすを、ネットの情報拡散で広く知ることになった。トランプなんかを支持するなんて、なんてバカなんだアメリカ人は!とぼくたちは平気で口にする。だが、バカはこっちかもしれない。


アメリカ大手メディアはウォール街の意向を受け、あらゆる手段でトランプ叩きをこれからも行うだろう。だから新聞やテレビだけを見ても、あまり真相はつかめないかもしれない。まして日本においては、アメリカでなにが起こっているのか知る由もない。

今回の大統領選は、既得権益者とアメリカ大衆層の代理戦争なのかもしれない。もしトランプ候補が選ばれたなら、世界が変わるだろうか。おそらく変わるのだろう。それがいいのか悪いのか、ぼくには判断がつかない。明らかなのは歴史の必然性という意味ではドナルド・トランプ大統領の誕生なのかもしれないということだ。

当事者同士の出来レースがやりづらい時代。
アメリカ大統領選挙を観察しながらのぼくの所感である。
そういう時代をぼくらは過ごしているのだ。

これは警鐘であり、朗報である。

 

 

3 件のコメント

  • 私も、トランプ氏が大統領になったら
    終わりだと思っていました。
    表にでてくる情報だけを本気にしないと決めていたはずなのに。
    いまの私にとって、イラ写が唯一のいろんなことを知ることができる場です。
    政治に詳しくないのですが、ちょっと思い込みを捨てて大統領選をみつめていこうという気持になれました。
    (*^^*)

  • トランプの政策詳細案が無いことが一番致命的では?
    口だけでは何とでも言える。
    他の共和党候補者も民主党ヒラリーも最低だが、極度の格差社会であるにも関わらずトランプが打ち出したレーガノミクス推進策(富裕層の税金を下げて更なる格差社会へ)は最低では?

  • アメリカの大統領は、世界のリーダーでもあることを忘れてはならない。トランプは、自国第一主義、つまりアメリカの事だけを考えている。人種差別を平気でやる。軍事力の増強もそう。こんな人を大統領にさせちゃ駄目。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。