この夏は、ロシアにしよう。
ある2月の凍えるような日曜日の早朝、多摩川のほとりを犬と散歩しながら唐突にそう思いつく。 そのように何ヶ月も先の予定を決めるのは、自分にしてはめずらしいことなのだけど。
毎年7月に「ひとり旅」をすることを自分に課している。 閉塞感たっぷりの東京での暮らし、それを窒息もせずに過ごせているのはこの年中行事のおかげだ。 閉じていた窓をすべて開き、外の風を入れる。 この国でまともに生きていくには、そうしないわけにはいかないのだ。
散歩から戻るとさっそく日程を決め、パソコンをひらいてモスクワへのチケットを予約する。 JALの直行便。 たまったマイルで支払いを済ませ、手数料をクレジットカードで支払う。
そこまでやって「なぜロシア?」と思った。
ぼくはいつも、決定に理由が追いつかない。
前回訪れたモスクワは、まだソ連時代であり、首都サンクト・ペテルブルグは当時、レニングラードと呼ばれていた。
「あれから20年以上たつのか・・」としみじみ思う。 あのときグム百貨店の吹き抜けのホールで泣きじゃくっていた迷子らしい女の子は、いまはもう30に近いのだ。 この世のものとは思えないくらい綺麗なブルーの目をした女の子、不思議な刺繍のついた分厚いタイツが印象的だった。
きょうは内心穏やかでない日中を過ごした。
仕事がなかなか片づかないうえ、ロシアのビザがまだ発給されていなかったのだ。 出発は明日の早朝。 パスポートはエージェントに預けたままである。 間に合わなければもちろん、成田に行ったところでぼくの乗る飛行機はない。
午後になってようやくエージェントからビザの用意ができたことを知らされる。 待ちに待った電話。 だのに「夕方6時までに取りに来てください」とそっけない。 おまけに夕方からの会議が長引いてしまった。 あわててオフィスをでたのは6時5分前。 めずらしく5ヶ月も前にチケットを予約したのになあ、と思う。
あいかわらずぼくの人生に「余裕」という言葉はない。
▲ 出発前日の夕方になって発行されたロシアビザ、間一髪でした。
旅のしたくにしてもそうだ。
朝6時の電車に乗らないと出航に間に合わないのに、まだ何も仕度ができていない。 ただいま午前二時、だのにのんきにこれを書いている。 到着がモスクワというだけで、まだなにも決めていない。 明日泊まるホテルすら決めていない。 パスポートとクレジットカード、それからいくらかのドルとルーブル以外はなにも持たず、手ぶらで出発したいという欲望に一瞬とらわれる。 が、ロシアはそんな旅行者を歓迎しない。 入国審査や外国人への扱いは、ソ連時代とたいして変わっていないと聞く。
「現地でブログを更新する」というのがぼくに課せられたもうひとつの使命である。 やはり手ぶらで行くわけには行かないのだ。 iPad一枚あればいいかな・・とも思ったのだけど、いろいろ考えて例年通りMacbook Airとワコムのタブレットを持っていくことにした。 イラ写恒例の現地更新はテキスト、イラスト、写真はもちろん、今回は音声や動画の配信もチャレンジしてみたい。 そのぶん荷物は増えるけど、それもまた楽しである。
「何が起こるかわからない旅」をできるだけあなたと共有したいと思う。
とここで、パソコンの前から離れ、旅じたくに取り掛かる。 「はちみつばななラッシー」という、およそおじさんには似つかわしくない飲み物をストローでちゅーちゅー吸いながら。
■「旅の持ち物」
▲ 軽くて丈夫、機内持ち込みもできるトランクケース。 色は野戦バージョン、薄緑色
▲ iPadだけですめばだいぶ身軽だったのだけど・・・。ていうか、現地にネット接続環境はあるのかな?
▲ これは昨年ジャカルタに持っていったもの。 今回はジーンズと靴下は省きました。 代わりにレイバンのサングラス。 緯度が高いぶん、紫外線は強烈です。
▲ グルーミングキット。これも昨年ジャカルタへ行ったときのもの。今回はローション以外、現地調達にしようかと・・
まあ、ほとんど昨年のインドネシアと同じ内容、7月の旅行者にとってジャカルタもモスクワもあんまし変わんないです。(ちなみにモスクワの今週の予想気温は32~35度!)
さて明日の今ごろはどんなベッドで横になっているのだろう?
もしかしたら、どのベッドにもありつけないかもしれない。
そう思うと、ようやくわくわくしてくる。
ふだんは息を潜めている少年の自分、
そいつがひょいと飛び出てきたのかもしれない。
では、いってきます。次回はロシアからお届け・・・できるんだろうか?
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