瓶のブルース

今の時代、
以前よりずっと孤独でいることが難しい。
たとえ一人ぼっちで部屋にいても、
ネットでどこかと繋がってしまう。

知らず、常に誰かしらの意見や考え、
挨拶やひとりごとなどにさらされている。
しかもそれらはとてもリアルで、
たった今起きているできごとだ。

いわば、自分のではない他人の現実、
それらがひっきりなしに流れている。

たしかに便利といえば便利である。
だが何に対して便利なのだろう?
いつしか社会通念となった便利さに
つい自分の存在を忘れそうになる。

抱くべきでない疑念や、
投げかけるべきではない問いに、
ぼくらはしだいに無感覚になっていく。
孤独ではない。だが、空っぽだ。

そのことはぼくに一本の空瓶を思わせる。

世界はこんなにも広いのに
明るすぎて、かえって見えない。
そんな感覚にも似ている。

ある日、ぼくはBARのストゥールに座り、
少しだけ飲んだロックグラスを見ている。
傍らには、いま飲んでいるウイスキーの瓶。
瓶は中身を吐き出すばかりで、逆はない。

孤独がいいのは
自分をあちこち分散させることもなく、
すべてを何かひとつに向けられることだ。
悩みたければ悩めるし
間違えたければ間違えることができる。
間違いを見つけたり、正す時間がある。

ぼくはパソコンもネットも好きだけど
ひとりで考えたりする時間も好きだ。
ひとり間違えたり、それを見つけたりするのが好きだ。
ネットでは頼まなくたって、たちまち正される。
たしかに便利といえば便利である。
だが、それは空き瓶ほどの便利さでしかない。

もとあった液体でなく、
なにか別なもので満たすだけの空き瓶。
それを正しいというのなら、
孤独の方がまだマシだ。

そんなことを思いながらぼくは
空のグラスを見ている。夜明け前の
空のカラスを見ている。

■ 朝やけにたたずむちびきち

ぼくもなんだかたそがれてみたくなったんだよ

11 件のコメント

  • なおきんさん、こんにちは。
    吐き出し続けることに疲れてしまったのでは、といらぬ心配をしてしまいます。たまには誰にも指摘されない、間違いだらけの世界にひとりぼんやりと佇む時間も大切ですね。繋がり続けることってホント難しいです。

  • 今回の記事、同感、同感、全く同感です。私は本来は寂しがり屋だと自負していますが、孤独を友に歩んできました。でも、やっぱり人恋しいものですし、でも喧騒に身をうずめる快感や嫌悪など、矛盾するかのような気持ちの振れに悩みはしないけれども、「まあ、こんなものだろう」と振り返る時間的な余裕も無い感じです (ナンノコッチャ?) 。若者よ、おおいに悩め、悩んでいるうちは 「若い」 証し、だと思いましょう、お互いに。

  • なおきんさん、スナフキン。
    なおきんさんの絵も書いてるもんも、いつもどこか異邦人ぽくて好きだなー。

    孤独というと、朔太郎が、田舎はどこにいても知ってる人ばかりで、その孤独感は耐えられなかったが、東京は良い
    ようなこと書いてたな。

  • だいじょうぶ〜? 面接前や面接で落ちまくってるめげないでいる私の元気あげたいくらいデス。 来年まで生きてたらめっけもん!と思ってる毎日です。

  • こんばんは。

    空瓶の口に耳を傾けたら小さく「フィー」て微かな音がしました。

    空っぽなんですけどね(笑)

    自分の内側の声に耳を澄ましてみたら其処には・・。

    「心」も「身体」も与えられたモノ。たまには優しく撫でてあげましょう。

    失礼しました。

  • イラ写で真っ黒なイラストを見たのは、初めてのような気がします。小さな窓の外は明るいピンクなのに・・そこへ行きたいのに・・・ダメです。真っ黒は・・どうか早く休養なさってください。とても心配です。。

  • 詩的で哲学的で、今日のなおきんさんは詩人のようだと思いつつ、、、最後の1行で、ああ、今日もなおきんブルースだったと、ひたいをピシャリ。BGMの静寂の音がいつのまにかカラスの鳴き声に。。。(私の脳内のハナシ。笑)
    私も、誰にも侵食されない独りの時間が好き。なおきんさんには、外野の騒音を跳ね返す芯の強さがありますよ。明日は土曜日、仕事は休みでしょう? ちびきちとリフレッシュしてね。

  • 結婚って、悪いことばかりでもないよ。
    だから、昔の人はお見合いで、結婚したんだよ。
    落語聞いてるとデコボコ大家が「一人者?そりゃーよくない。貸さないよ」っち言ってるよ。

  • お久しぶりです。この2ヶ月空っぽの自分と戦っています。Mixiで日記のタイトルを見ても開く気にならなかったのが、瓶のブルースはなぜか気になりました。
    なんでも無いことで涙が流れ、一人でいることが怖くてついついiPhoneの画面を見てしまう。メールが来ないことにおびえ、まるでネットに支配されているかのように感じていやになってしまう日々です。
    もちろん便利なこともいっぱいあるけど、こんな形で人とつながるのはもうしんどいかも。
    最近そんなことをよく考えるのは、何もなかった時代を生きてきたからなのかな?でもこうしてまたPCの前に座ってカタカタ書き込んでいる自分。矛盾だらけですね。
    そろそろ何か新しいことを始める時期かな?そう思っています。

  • 自分は本当は何の瓶なんだろう?
    って考えさせられました。

    サイダーの瓶なのに、炭酸だからって間違えてコーラで満たしてないかな?
    オレンジジュースで瓶をいっぱいにして、無邪気に振る舞ってないかな?
    アルコールで満たして自分を見失ってないかな…?

    っていろいろ自問自答してみたくなりました。

    この記事、深いですねぇ。

  • HALさん、一番ゲットおめでとさまです。
    >「吐き出すことに疲れた」<わけではぜんぜんないのでどうかご安心を。ひとり飲み屋でiPhoneをとりだし、ツイッターやフェイスブックのウオールなどをぼんやり眺めていたとき「ひとりでいるのに孤独になれない。これはいいことなのか?それとも?」というのが記事のきっかけでした。
    ——————————-
    昔の同僚さん、>「私は本来は寂しがり屋だと自負していますが」<自負することかいっ!・・というのはさておき、なにしろ「ひとりキャラバン」で欧州中を仕事しながら旅をしていた同僚さんですから、よくわからないこんなコメントもなんだか納得してしまって、うなずいてしまいました。若いですよね、お互いに。
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    かわら人、こんにちはスナフキンです。変換間違うと砂布巾、ちょっとざらざらしてそうですね。さて「田舎では孤独を感じ易い」というのがすごく同感。むしろ「知らないのはお互いさま」というほうが、期待値がなくて逆に孤独感から距離が置けるような気がしますね。
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    たまやんさん、就職難は想像以上のようですね。ぼくは採用する立場で年間約20〜30人くらい面接をしていますが、質問してもなんかこう答え方が画一的で「この人は会社になにをもたらしてくれるんだろう?」というポイントが見いだせません。今の日本は以前より従業員をなかなか切れないため、採用に慎重になる傾向にあります。ヨーロッパと同じですね。香港で人を採用しやすかったのは、首切りが比較的容易だったこと。これは悪いことばかりではなく、組織の活性化にはプラスに働くことが多いです。あれ、話がなんか変な方向に・・。すみません。
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    じさん、その光景をちょっと想像しちゃいました。今回のお題は、自分ときちんと向き合うことなく、他人に付帯する情報のやりとりばかりに忙殺されていないだろうか?という、ある種の自己罪悪感がテーマです。利他主義は自己犠牲を必要条件にしちゃダメだと。そうですよね。
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    ニモさん、真っ黒な色は心の闇の表現かもしれませんが、必ずしもネガティブじゃないのでどうかご安心を。人・モノには必ず光と影が一対で存在していて、光ばかりに目を向けてちゃ見誤るんじゃないかと思うんです。影は孤独のシンボル。避けず向きあうということでしょうか。
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    ぱりぱりさん、すみません、あいかわらずなオチで。でも実際のところ、始発までひとりのむことがあるんです。東京の朝はカラスのゴミあさりが日常光景で、困ったもんです。真面目な本文って自分でも照れちゃうので、ああやってしまうんですね。よくご存知のとおり。
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    じゅん爺さん、以前は「見合い結婚なんてとんでもない」と思っていたんですが、少子化を問題視する側に立てば、規範もやはり必要なのかなと思います。先祖から子孫に連なる代々の脈を、規範なく私情のみで果たして維持できるのかと。お見合いを規範と定義するのもいささか乱暴ですが。
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    Junpeiさん、ごぶさたでした。いろいろ心情的に大変だったようですね。また戻ってきていただきうれしかったです。ぼくらの年代は「なにもなかった時代」から「なんでもそろう時代」のちょうど狭間で、どちらも知っている稀な立場。それだけに新しいものや制度に、ちょっと距離を置きたくなる瞬間がありますよね。ごくふつうに。
    ——————————-
    はてなさん、なるほど「自分はなんの瓶」という発想も面白いですね。ぼくは「自分らしさ」という言葉があまり好きじゃなくて、ぼく自身、「ぼくはこういうのが自分らしいのです」と言えたことがありません。つまり自分の瓶があったとして、そこになんの液体が入っているのかを知らない。たぶん、それはまわりなら見えるし知っているんだと思います。自分探しは自分だけでは見つからない、と思うのはそんな理由ですね。

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    なおきん

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。