不思議の国の、孤独

「教えて。ここからどっちの道を行けばいいの?」
「それはそもそも、きみがどこに行きたいかによるね」
 と猫はいった。
「どこでもかまわないけど・・・」
「だったらどっちでもかまわないさ」

 『不思議の国のアリス』アリスとチェシャ猫の会話

たいていのことはネットを調べればわかる。聞けば教えてくれる。そんな時代になってだいぶ立つ。もう、ネットがなかった時代のことがうまく思い出せない。ただ、あのころは余白があった。ちゃんと、面倒に向き合う時間があったような気がする。

知らないことがすぐに分かるようになったのはいいことだけど、そのおかげでぼくたちはせっかちになった。聞くこと、調べることの敷居が低くなり、直ちに分からないと、いちいち落ち着かないのだ。タメというものがない。そのことで、自分の頭でものを考えることをしなくなったのではないか。そんな気がして、ぞっとすることがある。

こどものころに読んだ『不思議の国のアリス』。
何歳だろうと読むたびに発見がある。こういう物語もなかなかないと思う。上のアリスとチェシャ猫の会話は、始めて読んだ時にはなんとも感じなかったが、いま読むとしみじみ興味深い。ぼくたちが抱えるいろんな問題を示唆しているようにも思える。クイズ番組がやたらと多いのも、占いごときがやたら人気なのも。

いまほんとうに足りないのは
あなたがいま、これから自分自身をどうしたいか
あなた自身が語ることなのかもしれない。

正しいかどうか、そればかりが気になって答えられない。
過剰なコンプライアンス。間違えることがこれほど面倒な時代も、そんなになかったのではないか。その他大勢の大声にかき消され、うまく自分の声が聞こえない。

どこにも、だれにも接続しない日を作り
自分のしたい自分の声をちゃんと聞く。
孤独はそのためにあるが、なぜか嫌われてもいる。

それこそ不思議の国だ。アリス。
と猫はいった。


▲ イラスト、うろ覚えのイメージで描いてみました

8 件のコメント

  • 本当にせっかちになりましたよね。
    僕自身も以前に比べ、相当せっかちになっているような気がします。とはいえ、まだアナログな面もあり、何かわからないことや調べものがあったりすると辞書や参考書を広げます。ネットで検索もしますが、辞書や参考書で調べているとその前後にも目が行って「ついでの情報」も入手でき、それが意外と重宝するのですよね。
    今、仕事柄、色んな人の相談を受けたりするのですが、結構みなさん他人任せ。自分で判断できない、助言を聞きたいという気持ちもわかるのですが、自己責任を放棄し他人責任を追及するようになっている気がします。
    それを恐れてしまうと僕も仕事にならないので、ある意味クレーム覚悟で仕事をしている感じもあります。
    それでクレームが多くなってしまったら、仕事の評価に影響が出てしまうので悩みどころなのですけどね・・・(汗)

  • 自分が生まれた時代に感謝したいと思います。パソコン、インターネットは、年取ってからだから上手く使えるのだと思うし、母が機械に疎くなかったので、血筋?でこの年でも使えてしまうし、エクセルだって理解出来る。
    経験だって、日本だけじゃ無いし、本だけの知識じゃないし、自己体験が大きいので、今の方が何も無いけど楽に暮らせて楽しい。
    孤独感?疎外感も無い。て、いうか、自分にとって当たり前になっちゃたんじゃないかな?と思います。
    こういうのって、誰も理解出来ないかも知れないけど、それが当たり前になるのはそんなに悪く無いって事。
    他人に依存し、他人と楽しそうに過ごしている方が孤独感があるのかも?と思います。私を振り返っても、仲間を欲しがってる時、他人や家族と仲良くいる方が孤独感が強くで出たような気がします。
    勉強嫌いだった私が、今去年は落ちた職業訓練を楽しんでます。これが活かせるかどうか分からないけど、また1つ何かを得たような気がします。

  • 1人の時間を楽しめない人は
    大勢との時間も
    楽しめてないんじゃないかなぁ

    チェシャ猫の尻尾らぶりー♪デス

  • どの道を行けばいいのか分からなくなったとき、そもそも何をしたかったんだろうか、どこに到着すればいいんだろうかって、悩むプロセスがあったから成長できてた気がします。これは生き方の道を模索した時代の私自身のことですが、今はほんとにそんな時間を持つことが難しくなりました。もういい加減大人だからそういうこと考えなくてもよくなったのかも知れないですけど(笑)

    ネットで探せばいくつも答えが見つかるって例え、ドンピシャです。自分と向き合うことが少なくなって、確かに自分の言ったこと、やったことが正しいかどうかが関心の中心だったりします。

    今更なんですが、常識の国のアリスにはなりたくないなー(笑)

  • おはようございます。
    新舞子に来て下さった記事ぶりにコメント欄におじゃまします。本当にありがとうございました(←感謝は続くよどこまでも♪)。

    「まもなくあの日から一年」と最近よく耳にするものの 一体どんな風に、どうやって歩いてきたのか、自分自身のことがよくわからない360日だった気がして 今週は《自分自身を振り返る強化週間》中です。

    なおきんさんとちびきちくんにも いっぱい癒された一年でした。
    ありがとうございます。

  • こんばんわ。なおきんさん。うろ覚えで書いたアリスですって?うますぎですよ。わけがわからなかったので、ちゃんと読んだことがなかったので、今度読んでみよう。

  • mu_ne_2さん、一番ゲットおめでとさまです!
    せっかちになりましたよね、世の中。早く結果がわからないとストレスがたまりやすい、それが「うつ」の温床にもなると聞いたこととがあります。きっとmu_ne_2さんは話しやすいからでしょうね、相談者が多いのもわかります。
    ———————-
    市井みさとさん、
    そう、なかなか味わい深いものがあります、孤独。ただずう〜っと孤独というのは、張り合いがないでしょうね。チェシャ猫はトルコにいる、ときいて、アナトリア地方に旅した時に探したことがあります。見つからなかったけど。
    ———————-
    たまやんさん、
    そうですね。この時代は本当にいい時代だと思います。とぼくの場合、どの時代に生まれてもそう言ってそうですが。依存症から脱した暮らし。いいですね。相互依存関係って、良い距離があって初めて成り立つ気がします。
    ———————-
    ねねさん、
    そうですね。ひとりを楽しめない人は自立心が個で成り立たないから、相手に足りないところを求め過ぎちゃうんじゃないかと思います。大勢でいてもおちつかないでしょうね。
    ———————-
    ぱりぱりさん、
    そうそう、悩むプロセスは大切ですよね。避けてちゃいい機会を逃します。相手を大切に想うのは、自分を大切にする気持ちがあってこそ。自己犠牲を勘違いすると他人を傷つけて平気になっちゃうもんですね。
    ———————-
    mayuさん、
    とってもおひさしぶりですね。お元気でしたか?ときどき振り返る時間も必要ですね。これから前に進むとき、たどってきた道を確認することで迷わなくなるはずですから。これからも元気でね。
    ———————-
    ニモさん、
    イラストについてありがとうございます。ぼくは描く前にイメージを強く頭の中で描いてみるんですが、不思議とアリスはディズニーものとかつて読んだ児童書のものが仲良く記憶されてました。いったいどれだけ繰り返し読んだんだろうかと。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。