急がばまわれ

おおかたのマスコミの予想と違い、アベノミクスは順調に奏功している。一部を除き、海外からの評価も良く期待も大きい。国内の新聞の一部はこれをアホノミクスなどと呼び、どうせ失敗するからと危機をあおりはするが。それでも1年前にはあれほどあった「日本破綻論」が下火になったこと自体、アベノミクスの効果を実感するところだ。

日本の景気はよくなりつつある。
とはいえ、景気回復にはほど遠い。
1ドル100円の円相場も1万4000円の平均株価もこれまでがひどすぎたからよく見えるだけで、本来の日本経済の実力値からすれば本来、それぞれ120円、1万8000円くらいではないか。景気の気は「気分の気」。アベノミクスは、そんな「気」を変えた。だがそれまでだ。今の段階ではせいぜいぼくたち庶民をして、たまには発泡酒でなく本物のビールでも買うか、と思わせる程度である。

そんなわけで今はとてもデリケートな時期である。
景気の上向き加減はまだまだ不安定で、亀のように臆病だ。少しでも景気に陰りが見えればすぐに頭を引っ込める。このままの上昇ベクトルで2年、できれば3年経たなければ「この景気は本物」という実感がわかないんじゃないかと思う。その意味で先日の参院選でねじれ国会が解消したのは朗報だ。なにしろ安倍政権が3年続くことが前提だからである。

そんなデリケートな時期に消費税率を上げるとどうなるか?
まちがいなく消費は冷えるとぼくは思う。長いデフレ時代の習性で、ただでさえぼくたち庶民は「待てば値段は下がるもの」という感覚が根づいている。そこへもってきて、円安の影響で物価がじわりと上がった。スーパーの店頭で昨日より値段が上がると買うのをためらう。財布にはいるお金は変わらないのに、出ていくお金は増えていく。そこへ消費増税で物価はさらに上がる。レシートには8%の文字。当然、節制せねばと思う。ほしい物をひとつガマンするか、安いもので代用する。どうなるか?小売店の売上は落ちる。人件費を削って価格を下げる。なにが景気が良くなっただよ。前とかわんないじゃん。買う側も売る側も気分が落ち込む。よくなると思った景気はふたたび悪くなる。

そもそも、である。
消費税率を上げる目的は税収を増やしたいからである。だのに売上が下がっては、数パーセント税率を上げたところで税収そのものは減る。これは前回消費税率を上げた1997年をふりかえればだれでも想像がつくことだ。あのとき消費税を3%から5%にたった2%上げただけで、それまで4年連続で上がっていたGDPがマイナスに転じ、1999年にはなんと11兆円も税収が減っている。イタリアなどは1%上げただけで税収がマイナスなって大騒ぎだった。

「消費増税もしょうがないかな」という声は、このまま日本が赤字を垂れ流せば将来危ないんじゃないかという不安を少しでも払拭したいからだ。その不安を逆手に取り、とにかく税率を上げ抜きたいという考えはあまりに恣意的すぎないか。

たとえば来年4月に3%上げるとする。
過去に見てきたように消費は落ち込む。アベノミクスはたぶん腰砕けになるだろう。景気は「気」だからだ。株価は「予定通り」とちょびっと上がるかもしれない。でも実体経済を反映してしだいに下がるだろう。やがていろんな数字も明らかになり「上げなきゃよかったな」てなことになる。そんなとき、翌年には予定通り8%から10%に上げることができるのか? できないはずだ。それこそ「様子をみよう」ということになり、8%のまま膠着するんじゃないか。すると業界お楽しみの「軽減税率」も見送られる。

新聞各社の狙いは軽減税率だ。消費税が10%になったとき、自分たちの商圏は安い税率が適用されるから価格競争力が上がると目論む。日経新聞などは先日のトップで「消費増税賛成70%」とぶちまけてみた。ほんとうは10%だったのを継ぎはぎしたのだ。毎日新聞などは社説で8%でも軽減税率を適用すべきだと書く。もちろん私利のためだ。朝日新聞や中日(東京)新聞は、アベノミクスのダメ出しばかりをする。これは中韓と摺り合わせのためか。新聞各社は消費者の声を代弁しているかのようで、していない。

もともと安倍さんは消費増税については慎重である。アベノミクスにとっては阻害要因になるからだ。さすがに首相になれば、法制化されたものを「反対」と言えず、公ではやるともやらないとも言わない。麻生さんや日銀の黒田総裁からは「予定通り増税容認」のフライング発言があったが、これも静観している。本音は「このタイミングじゃない」と思っているはずだ。

本来の目的は税収を上げること。
税率を上げることはその手段であると、ぼくは思う。すべきことはまず徴税出来ていない年間10兆円もの税金を回収することだ。それからマイナンバー制度を完了して徴税漏れをなくしておく。そこがザルのままではいくら徴税しても貯まらない。それを「消費税なら脱税しにくいから」というのは本末転倒だろう。ここまで最低3年はかかる。だがその間、景気が上がればモノは売れ、企業に利益をもたらす。業績が良くなれば株価も上がる。今のままの税率でも税収そのものは増えるのだ。税率は単にレバレッジでしかない。タイミングがよければ倍になるが、間違えば半減する。来年4月のタイミングじゃ結果は後者。消費者は欲しいものを我慢し、企業は売上機会を逃し、税収は減る。誰も喜ばないトリプル損。増税して税収が減るなんて、本末転倒そのものである。

安倍さん、機が熟すまで税率は上げないで下さいね。
あなたにはそのことが一番よくわかっているはずです。

急がばまわれ 消費増税

ということで。

4 件のコメント

  • よく、マスコミが、今消費税を上げないと海外からは日本は本気で国の借金を返す気がないんだとみなされて、日本経済が信用を失う(乱暴な要約だけど、趣旨わかってくれるかな?)とか言われているけど、あれは善良な市民への「増税しないと信用失って大変なことになるよ」という刷り込みにすぎないの?けっこう、まじめそうな主婦やおじさんが、街頭インタビューでも「必要なら仕方がない」といっているのは、それを信じているからだと思うんだけど。

  • さっちゃん、ブログ閉鎖を救ってくれてありがとう!ここんとこコメントが減ってきたからそろそろ店じまいかな、と思ってました。さて、よく言われるように消費増税をしないと「国債公約違反」だの「法律違反」、というのは財務省と3党会議の描いたシナリオで、なんの不履行処置はありません。外圧を利用して目的を達成しようとする、あいかわらずの不埒な考え方です。増税したおかげで税収が減る事こそ、国際的な日本の信用を失うのではと。

  • え、やっぱりそうなの。むかつく。安部さんが時間をかけて考えている(ふりかもしれなけど)のは、まだ良心のかけらが残っているんだね。ほんと、経済ヒョーロンカみたいな人も「増税しないと、信用失う」と言ってるし、御用ヒョーロンカだね。
    法人税も安くしないと、会社が逃げていくね。まあ、法人には選挙権がないから、法人税を下げると言っても票が集まらないからね。

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    なおきん

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。