宇宙人といえば、あれだ。
小型のサルのような光沢のある小さな宇宙人。トレンチコートを着た二人の男に挟まれ、両腕をつかまれた有名な写真。宇宙人と聞いてまっさきに思い浮かぶのは、あの宇宙人である。
テレビのミステリー特集か何かでみたのだろう。まだ小学生にもなっていなかったかもしれない。同じころウルトラセブンをやっていた記憶も併せ持つ。なんとか星人などという宇宙から来た怪獣がたくさん登場していた。だけど宇宙人なんかぜんぶ嘘だ。ただ唯一、あの小人を除いては。などと思っていた。オトンの受け売りであった。
どんなに恐ろしかったことだろう。
と幼いぼくは想像する。謎の宇宙人を恐ろしがる代わりに、宇宙人に強く同情した。円盤が不時着したその星にはこれまでみたことのない風景が広がり、変わった感じの空気がある。「もう家に帰れないかもしれない」と、ただでさえ不安なところへ、おかしなカッコをした野蛮人(人間のことだ)に見つかり、捕まってしまう。ぐいっと両腕をつかまれ、不安そうに仰ぎ見れば、自分を見下ろす顔のなんとオソロシイことか。古い写真のせいか、後ろのおばさんなんてなんだか亡霊のようにみえる。
宇宙人にしてみれば、もう不安で不安でやりきれないはずだ。これからなにをされるのか。おなかを切って内蔵をのぞかれちゃうのか?はたまた見世物小屋に売られるのか?腕からポリポリと食べられちゃうかもしれない? 見知らぬ土地、というか星。人類という名のバケモノ。デカいし臭い。それがうじゃうじゃいる。ああ、自分の星に帰りたい。やさしい両親の、恋人の、いやもしかしたら結婚して子供がいるかもしれない。子供に逢いたい。元気だろうか?お父さんがいなくなって、きっと寂しい思いをしているに違いない。
ちびきちは、大きくて太った女性を見るたびに吠える。はじめて連れて行かれた病院のスタッフがそんな体躯だったからだ。診察台の上で動かないようガシッと掴まれ、よほど恐ろしかったのか、これまで聞いたことのない声をだして鳴いた。以来トラウマ。そんなちびきちなら、あの宇宙人の気持ちがよくわかるに違いない。
なのにあの宇宙人がニセモノだといまさら言われても困る。
ハロウイーンちびきち
あくまくん
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