調子よくいかないとき、スナフキンを想う。
スナフキン。あのムーミン谷の住民であり旅人である。孤独を愛し、ものごとを所有することを嫌う。冬が来る前に南へと旅立ち、春の訪れとともにムーミン谷へ戻ってくるあのスナフキンである。
本名はフィン語でスヌスムムリクという。フィンランド人以外にはツラい発音である。そんなところも彼らしい。自由を愛し、束縛を嫌う。人間関係がこじれていくさまを嫌い、そっとその場を離れる。風のように旅をしながらいろんな生き物と出会い、ときに迷い、月に願をかける。
スナフキンはいう。
「僕は物心がついたときから たった一人で旅を続けてきた。多分 これからも そうするだろう。それが 僕にとっては 自然なことなんだ」
旅は本来、ひとりでするものだと思うようになったのは、スナフキンのせいであり、おかげである。ひとりでいると気持ちはむしろ外に向く。「ひとりで旅なんかして、不安になったり寂しくはないの?」と聞かれるが、だれといても同じように不安になったり寂しくなるものだ。
スナフキンはいう。
「大切なのは自分のやりたいことを自分で知っていることさ」
ときどきぼくたちは自分がなにをやりたいのかわからなくなることがある。やらなくちゃならない。そういうものに溺れそうになりながら、自分がやりたいことを失ったり忘れたりする。そもそもなかったりする。自分が今やっていることは自分が心からやりたいことか? そんなふうに自問することは、悪くない。
スナフキンはいう。
「僕のものではないよ。だけど僕が見ている間は 僕のものなのかもね。」
人は生まれて死んでいく。死んでいくとき、ぼくたちはなにも持っていけない。愛したひとも、大好きなものたちも、お金を払って買ったものも、もらったものも。所有するというのは、まるでうたかたのようである。ならば「見ている間は僕のもの」くらいがちょうどいいのかもしれない。
自分の代わりに自分の思っていることを代弁してくれるスナフキン。そう思う人は少なくない。「名言集」がネットでも流行っているそうだから、興味があれば検索してみたらいいかもです。
「ものなんて、心配と荷物を増やすだけ 気が重くなるだけでしょ」
これはミィの言葉。なかなか秀逸である。
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