デザインセンス

なにをもってデザインセンスがよくて
なにももって悪いのか

いい年しても、まだわからない。
いや、わかった気になっていたのだけど
この年になって、またわからなくなった
というべきだろう。

ぼくは、ちっちゃな子どものころから
文房具とキッチン用品が大好きだった。
デパートに連れて行かれると、
飽きもせずそれを眺めていたものだ。

かといって勉強や料理が好きなわけじゃない。
意識することはなかったが、たぶん
機能美に惹かれやすい性質があるのだと思う。

見た目だけじゃなく、ファッションでもなく
使うほどに便利で愛着のわくモノたち。

アップル製品のほとんどのデザインを任されている
ジョナサン・アイブはこう言う。


▲ ジョナサン・アイブ

シンプルなものが良いとなぜ感じるのでしょうか?
我々は、物理的なものに対し、それが自分の支配下にあると感じる必要があるからです。複雑さを整理し、秩序をもたらせば、人を尊重する製品に出来ます。シンプルさというのは、見た目だけの問題ではないのです。ミニマリズムでもなければ、ごちゃごちゃしていないということでもありません。複雑さの深層まで掘り進める必要があります。本当にシンプルなものを作るためには、本当に深いところまで掘り下げなければならないのです。
たとえば、ネジをなくそうと考えたのでは、えらく入り組んで複雑な製品ができてしまうかもしれません。もっと深い部分でシンプルさを実現すべきなのです。対象のあらゆる面を理解するそれが、どう作られるのかも理解する。つまり製品の本質を深く理解しなければ、不可欠ではない部分を削ることはできません。Steve Jobs II】


▲ アイブ氏のデザイン。カーブのかかった底面、ネジ頭の処理も素晴らしい。スティーブ・ジョブズが大好きな角丸の四角形で、外観も中身のソフトも一貫してデザインされている【Macbook Air


▲ 天板との合わせ処理の美しさに圧巻。そんなデザインも、指一本でディスプレイ部分が開く実用性にこそ優先される【Macbook Air

「つきつめればシンプルになる」といわれる。
増やすことより減らすほうが、ずっとむつかしい。
アイブ氏がいうように「製品の本質を深く理解しなければ」
やみくもにデザインをシンプルにしてはならないのだろう。

人はみな、それぞれ違う。
あの人と自分は同じではない。
だのにあの人もこの人にも気に入られるデザインがあり、
それを生み出しているデザイナーは本当にすごいと思う。

他に何百万通りもあったはずなのに
まるではじめからそうきまっていたかのような
ごく自然なデザインをまとったモノたち。

そういうものに出会い、そばに置くと
とても幸せな気分になる。

いつまでも撫でていたくなるようなデザイン。
高価なものでなくてもあっても、
ぼくの中でセンスのいいデザインは実用品である。

見ただけでそれをどう使えばいいのかがわかる

デザインセンスの良し悪しはそれで決まるのだと
いま、思いはじめている。


▲ 衝動買いしました。まだ対応機種が少ない、iPhone4S用のコードレスのマイク付きヘッドセット。装着感がいいのはこの、くにゃっとやわらかい耳の形のせい?【Jebra製】

Steve Jobs下巻

一気に読めば4時間かかるかどうかだけど、ついストーリーに出てくる製品をさわってみたりプレゼンの様子やCMをYouTubeで見たりの「ながら読み」で、たっぷり時間をかけてます。おかげで呼び寄せられたかのように、本のまわりにアップル製品が集まって来ました。

5 件のコメント

  • なおきんさんの目を通した世界は本当にすごい。
    だから大好きです。

    うまく書けないけど・・・・
    とにかくなおきんさんの書く文章が世界で一番好きです。
    どうして作家にならないのか不思議でならないくらいです。

  • なおきんさん、私も一緒です〜。文房具とキッチン用品のシンプルだけど、いろんな応用性があるところが好きなんです〜。^^

    アップル製品もそうなんだぁ〜。納得ぅ〜。

    そして、最近車を買い替えたんですけど、ニッサンキューブもいがいとシンプルいずベストでした・・・。

    事故ってしまい、買い換えてはじめてわかる、使いやすさ・・・。ww(字余り)

    いまはマーチさんに乗ってますが、障害者の目線でいうとキューブは案外ピカいちかもしれんです。^^

  • わたしの仕事は企画を量産に落とし込むこと。毎回デザイナーさんの「ここはもっとシャープに。あそこのRがデザインと違ってる・・・。」そんな細かいことを言われ、「それって重要?!」と心の中で毒ついているのですが。
    世の中には、そのRやシャープさにうっとりしてくれるユーザーがたくさんいるんですね^^
    それがわかって、また明日からがんばれます。

  • 美しいデザインは美しく正しい動きを生み、逆に美しい動きは美しく設計されたデザインを求めるのかな、と、最近物を扱う身体の動きについて考えることがあって共鳴してしまいました。思考なんかも同じかもしれないですね。

  • *花**さん、一番ゲット、おめでとさまです!
    初コメントもありがとさまでした!あまりほめられることがないので、そういわれると、なめくじに塩をかけたように溶けてしまいます。作家にならないのは世間にこれ以上迷惑をかけたくないからです。それと、本当は書くのがあまり好きじゃないから。
    ——————————-
    てるすけさん、
    アップルのジョブズ氏とアイブ氏は、そろってキッチン売り場にいってデザインを研究することがあったと知り、みょうにうれしかったです。美しい実用品ほど心を掻き立てられるものはありませんね。俗人なぼくには美術館より学ぶところが多いです。キューブ、よさそうですね。利用者目線に徹底的に寄り添う姿勢が企業には必要ですからね。
    ——————————-
    ベティさん、
    企画を量産にお落としこむことってさらっといわれてますが、それ、ほんとうにたいへんなことですよね!まとめるのも大変だし、さまざまな問題を同時に解決しなくちゃいけませんからね。尊敬します。ぜひがんばってくださいね。
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    どらみっちょさん、
    >「美しいデザインは美しく正しい動きを生み、逆に美しい動きは美しく設計されたデザインを求める」< いやあ、いい言葉です。そのとおりかもしれませんね。やっぱりデザインって使う人や着る人の一部になってはじめて映えるんだろうと思います。とってつけたものじゃなく。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。