お笑い芸人のひとりが、母親の生活保護不正受給で槍玉にあがっているという。たしかに不正には違いなさそうだが、問題のもとにあるのは財政難であるにもかかわらず生活保護者が200万人を超えたことへの危惧。有名人を使った見せしめと「不正受給者への牽制」がこめられているようにも思える。
おそらく不正受給者もそれなりにいるのだろう。
だけど、申請が受理されれば生活保護は受け取れるのだ。審査が甘いという批判もあるが、これは制度を変えるしかないだろう。受給者を責めてもはじまらない。そもそも憲法25条があり法治国家である日本では、生活保護制度をやめるわけにはいかないのだ。
2012年に入ると生活保護受給者210万人、保護費は3.7兆円にもなる。ひとりあたり年間177万円である。納税者の一人としてはなかなか複雑な思いだけど、誰にしたって受給者になる可能性がまったくないとはいえないのではないか。
210万人の内訳は、高齢者が半分弱。
傷病者が四分の一。残りが母子家庭など。
ぼくは事業の失敗から、働けど働けどしばらく無報酬だった時期が数年間あった。それでも生活保護を受けなくてすんだのは五体満足であったことと、天涯孤独でなかったことで、たまたま運が良かっただけである。誰もが憂き目に遭わないとは限らないのだ。
生活保護受給者は自殺される方も多い(一般の2.5倍)。そもそも「働かずにカネをもらっている」ことより「働きたいのに働けないでいる」ことのほうが、よっぽど悲しいことだ。「誰かの役に立ちたい」と思うのは、人間の本能である。
じゃあなぜ、生活保護受給者が増えたのか?
ひとつは景気無策という人災。もうひとつは高齢化だと思う。
政府もメディアも不正受給者を槍玉にあげ、そっちに世間のうっぷんをぶつけさせようとしているが、真に責めるべきは政府の景気低迷への無策ぶりである。
景気低迷の原因は3つ。
円高、デフレ、株安 である。
諸説あるが、これが是正されれば日本経済は今よりマシになり、雇用だって増える可能性が高い。
「それができればとっくにやっている」
とあなたは思うかもしれない。だが意外とそうでもないのだ。デフレの原因は「円が足らないこと」。円高の原因はドル発行額に対して円発行額が少ないこと。端的に言えばそれだけの話だが、いろんな理由をつけては通貨を発行したがらない。景気を犠牲にしてまでインフレを極端に嫌う性質が、財務省にはある。
今年の2月14日に円安にふれ、平均株価が1万円以上に戻った。理由は日銀が1%のインフレを望み、円を増刷することを示唆したからだ。噂だけで円は対米ドル2円も下がり、株価は2千円上がった。
為替レートは単純に日本円のマネタリーベース(世の中に出回っているお金の総額)を米ドルのそれで割った数字である。日本円は140兆(円)で、米ドルは2兆(ドル)。割れば「1ドル=70円」という計算になる。実際のレートはおよそ78円(2012年6月)だが、これが通貨の実力値だ。
これが1ドル100円になれば、平均株価は13000~14000円まで上がるだろう。根拠は為替レートと平均株価は実は相関性があるように思うからだ。例えば1ドル120円のとき、日経平均株価は18000円もあった。
景気対策は意外にカンタンではないのかと思う。
輪転機を回し、日銀に60兆円ほど増刷してもらえればいい。
マネタリーベースは140兆円から200兆円に増え、2兆ドルで割れば為替レートは100円となる。実際には90〜95円程度までだろうが、円通貨が増えたことで相対的にものの価値が上がりデフレは止まる。平均株価は数千円上がる。企業も株主も懐が潤う。再投資も活発になることだろう。労働分配率を誤らなければ雇用も増えるはずだ。
▲ 日本銀行の建物
消費増税などで得られる税収の12年分が一度の円の増刷でまかなえるのだから、安いもんである。ていうか、何の不都合があるのだろう?
生活保護者の不正受給なんて、いつどんな時代でもなくなることはない。そこを追求して犯人探しをするより、日銀はさっさと60兆ほど円を増刷してください。
国債バブルで相対的に円が高い
いまこそチャンス!だと思う。
なおきん後記:
この某タレントによる「謝罪」については、「実は不正受給ではなかった」との解釈もあり、謝罪する必要はなかったとする意見もあります。ぼくは真相の追求そのものより、今回の発覚から世の中がどう動くのかに注目しています。たとえばまず謝罪会見後、小宮山厚労相から「生活保護支給額の引き下げを検討します」とありました。各方面の専門家からは「個人を把握するシステムとしてマイナンバー制度を普及させろ」という声も上がっています。「世論に後押しされて制度を変える」のはよくあることですが、肝心なのは「世論」もまた誰かによって作られてしまうこと。そのからくりがとっくに見透かされているということでしょうか。
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