お灸を据えられた。
とはいえ、犯した罪をとがめられたわけじゃない。
もちろん、女王様にロウソク攻めされたわけでもない。
ひと月ほど前から頭痛がひどく、
周囲にそのことを漏らしていたら、会社のKさんが不憫がり、
オススメのはり灸の先生をぼくに紹介してくれたのだ。
すっごく効くんです。 それに、女医さんです。 どうですか?
おねがいします。
二つ返事だった。
場所は銀座、
労せず探し部屋に入ると、待っていたお姉さんから
「服をぜんぶ脱いで、このパンツをはいてください」
と言い残し、部屋を出ていく。
いわれるままに服を脱ぎ、パンツをはく。
それから5分がたち、放置プレイかな? と思っていると
ドアがノックされ、お姉さんが戻ってきた。
お姉さんは「シノハラさん」という。
さあ、あおむけになって と、シノハラさん。
少しドキドキしながら、いわれるままに仰向けになる。
それから20分くらいかけて、カラダのあちこちに
ぷすぷすとはりを刺していく。 まずはおなか、次に足・・
痛みはまったくない。 ぷす、顔も。 ぷす、頭にも。
へえ、頭にも刺すんですね、と意外そうに訊けば
「骨と頭皮の間に薄い筋肉があるんです」と事もなげにいう。
実はキーボードを叩くと、手がしびれるように痛むんです。
頭痛を和らげるために来たのに、ついでにそっちもアピール。
「なるほど」とシノハラさんは言い、うつぶせに、と誘う。
べつに誘(いざな)いはしなかったけれど。
「うーん、これはひどい」(ひどいのか)
「ほら、肩甲骨が左右で大きさが違います」
そういいながらシノハラさんは、はりをうつ手を止めない。
ぷすぷすぷすぷすぷすぷす、あたたたたたたたっ!
そこからはもう、早打ちのシノハラさんなのだった。
「お灸を据えられたことは?」と訊かれ、
はい、説教部屋で何度か・・と答えそうになって、やめた。
うつぶせになったぼくの足の裏に、さっそくモグサが盛られる。
何ヶ所も。 痛がゆい熱さ。 熱い温泉に足を浸した感じだ。
お風呂に入っている気分です
ぼくはそういい、5分ほど眠ってしまった。
それから心地よいマッサージが始まる。
銀座の個室で若い女性とふたりきり、
パンツ一丁の男からため息が漏れる。 危険だ・・・
はい、おしまい!
現実に引き戻される。 ああ、気持ちよかった。
たっぷり90分。 はりとお灸とマッサージ。
「初診ですので30分おまけします」とシノハラさん
そういえば料金を聞いてなかった。 でもとにかくお得なのだ。
お店を出たあとで、ケータイにメールが入る。
緊張と弛緩
集中と拡散
鼻で深く深呼吸
バランスが大切、おだいじに!
シノハラさんのアフターサービスメールであった。
バランスが大事だそうです。
はり灸は初めてではなかったけど、初めて効いた気が
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