スタバはいつも混んでいる。
どこのスタバもたいてい混んでいる。
時間帯によっては座れないこともない。
そのくらい、いつも混んでいる。
運よく座れないこともない時間帯だったのだろう
ツタヤのなかにあるそのスタバでは幸運にも
ソファがひとりぶん、空いていた。
香港に住んでいたころは、このコーヒーなくしては
一日が始まらなかったものだけど、さすがは日本
スタバ以外にも美味しいコーヒーはいくらでもある。
せっかくの席をとられないよう注文する前に、
鞄をソファの上におこうとして、ふと手が止まる。
最初それが何なのか認識できないほど意外なものが
目に飛び込んできた。
バナナが一本、ソファの上に置いてある。
なんでバナナ? 忘れもの? それとも席取り?
あたりを見回す。だが立っているお客はいない。
カウンターに目をむけるが、そこにもいない。
きょろきょろしながら、お客のひとりと目があった。
30前後の青年。「何か用っすか?」その目が訴えている。
ぼくは視線を外し、あらためて目を落とす。
バナナはやはりそこにあった。
ぼくはすばやく推察する。
バナナはソファの真ん中に置かれている。
端っこならまだ、バックからポロリと落ちました
的な偶発さも感じるのだけれど、真ん中である。
「ちゃんとここ、置きましたからね」
という、意志すらも感じられるほどだ。
もしかしたらバナナ爆弾?
そういえばさいきん、へんなメールが増えた。
犯人はきっとこのブログを読んでその内容に腹を立て
ぼくが来ることを知り、先回りしたのかもしれない。
証拠にぼくがバナナ好きであることを知っている。
だがそんな回りくどいことをするだろうか?
逡巡したが、鞄はテーブルのほうに置き
コーヒーを注文しに、カウンターへ向かった。
ぼくはたいてい「本日のコーヒー」を注文するから
待つことなく、トールサイズのカップを受け取る。
紙ナプキンを数枚抜き、カップをもって席へ歩く。
戻ってみて思わず「あ」と声が漏れた。
さっきのバナナが消えていた。
条件反射的に、あたりをみわたす。人に動きはない。
カップをテーブルの上に置き、しゃがんで床を見る。
やはり、バナナはそこにもない。ただ消えたのだ。
ぼくはあきらめ、席に着く。
いたずらだったのだろうか? どこかで隠し撮りされてて
あとでYouTubeにでもアップされるのだろうか?
あのバナナの正体は、今でもよくわからない。
目の錯覚にしてはあまりに鮮やかであった。
ダークブラウンのソファに重なる黄色いバナナ。
思い返すにつれ、なかなかシュールでした。
取り立てて話すことでもないとは思うけど。
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